期日に間にあわせようとすると情報処理がいちじるしくすすみます。アウトプットをする、問題を解決するためには期日が先に決まっていなければなりません。
NHK・Eテレ「スーパープレゼンテーション」で「“先延ばし達人”の頭の中」を放送していました(注)。スピーカーはブロガーのティム=アーバン、やるべきことを “先延ばし” にしてしまう人の思考回路を分析、“先延ばし” 癖を克服するために必要なことを指摘していました。英文タイトルは、“Inside the mind of a master procrastinator”、“procrastinator” は「先延ばしする人」という意味であり、“master procrastinator” は「先延ばしの達人」ということになります。




端的にいってしまえば、先延ばしの達人とは物事に期限がない人、無期限で生きている人のことです。実際には、いつかは誰でも死ぬわけであり、人生には期限があります。死は、刻々とせまってきているのです。人生は有限であり期限があることを自覚できないと、ずるずると生きてしまいます。ずるずる生きていると人生の問題や悩みも死ぬまでつづきます。

何事も期日がないと、いつでもできるとおもって、けっきょく何もできなかったということになりかねません。

しかし、たとえば学生でも社会人でも、プレゼンテーションをしなければならないとか、報告書や論文を提出しなければならないといったときにはかならず期日があります。それに間にあわなかったらどうしようもありません。不完全でも間にあわせます。場合によっては、当初の予定の7割程度のできでおわるかもしれません。それでもよいのです。期日に間にあわせることのほうが重要です。それが情報処理をすすめ、問題を解決し、人をそだてます。期日に間にあわせるということは能力開発のとても重要な訓練になります。

わたしは以前から図書館で本をよくかります。図書館でかりた本には返却期日があります。これがいいんですね。期日までに不完全でも全部を読みおえます。時によっては返却日の前日に一気に読むということもあります。これに対して購入した本は、いつでも読めるとおもっていて、気がついたら半年もすぎていたなんてことがあります。

あるいは博物館や美術館の特別展には会期があります。会期のあいだに見にいかなければなりません。また二度と見ることはできないので必死になって集中して見ます。これに対して常設展は、いつでも見られるのでまた来ればいいなどとおもっていて、気がついたら半年もたっていたなんてことがあります。したがって常設展であっても、ブログにアップするとか、取材記事を提出するとかいった期日を先に決めてから見にいった方がよいです。その方が観察眼もつよくなります。




人がおこなう情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点からとらえなおすと、最終的なアウトプットをいつおこなうのか、期限が先に決まっていることが非常に重要であるといえるでしょう。

アウトプットをするためには、まずは、課題を明確にして、できるだけたくさんの関連情報を内面にインプットしなければなりません。そしてプロセシングは、睡眠中におもにすすむことが科学的・医学的にあきらかになっています。アウトプットをするまでに何回もの十分な睡眠をとったほうがよいです。睡眠中のプロセシングは潜在意識が自動的にすすめるとかんがえられています。

たとえば来月の15日にプレゼンテーションをしなけらばならないとか、報告書を提出しなければならないといった場合、期日を明確にしてインプットをして睡眠をとっていれば、期日にあわせて内面で情報が処理されていきます。期限がきまっていないとプロセシングはすすみませんが、期限が決まっていると、あるいは期限を決めると潜在意識が発動してプロセシングがすすみます。するとたとえば睡眠から目覚めた直後などにさまざまなアイデアがうかんできます。

このような睡眠にくわえて、心象法や記憶法あるいはあなたの専門分野の技術などを実践すればなおよいでしょう。

わたしの場合は、アウトプットそのもの(文章を書いたりすること)をするのはいつも期日の直前です。直前に一気におこないます。アウトプットそのものはかなり短時間でおこなっています。しかしインプットとプロセシングにはかなりの時間がかかっています。アウトプットの時間はみじかくても、情報処理全体にかかっている時間はかなりながいです。

期限を設定するということは、仕事や物事あるいは人生をどこかで区切ってしまい、前の段階から “卒業” するということでしょう。そのためには不完全さにたえることも必要です。すべてを完璧におこなうことは不可能です。7割程度のできでもよいのではないでしょうか。7割程度のできでもよいので、とにかく出力してしまうことです。完璧をめざしていると “ずるずる” ということになります。

このようにみてくると、アウトプットのためには、自発性だけでなく切実性も必要だということがわかってきます。自発性と切実性は一見 矛盾するようですが、この矛盾は創造の過程で解消されていくのではないでしょうか。


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▼ 注
ティム=アーバン「“先延ばし達人”の頭の中」(スーパープレゼンテーション)