情報のひとまとまり(ファイル)は、表象という表層構造と情報の本体という潜在構造とからなりたっています。表象をみてメッセージをつかむことが大事です。
東京国立博物館で特別展「運慶」がひらかれています(注1)。仏像は精神世界の表象であり、それぞれの仏像はそれぞれにメッセージをつたえています。そのメッセージは直接よんだりみたりすることはできませんが、わたしたちは表象をみることによって、想像したりかんがえたりすることができます。顕在している表象に対して、メッセージは潜在しているといってもよいでしょう(図1)。

171026 表象
図1 表象とメッセージ


似たようなことは、コンピューター・ファイルについてもいえます。コンピューター・ファイルは、アイコン(+ファイル名)と情報の本体とからなりたっています。アイコンは表象であり、それをクリックしたりタップすると潜在している情報の本体をよびだすことができます。ここでは、ファイル(情報のひとまとまり、単位)を球にモデル化(図式化)しました。

171026 アイコン
図2 ファイルの構造


ウェブサイトなどで他者のファイルを利用したり、あるいは自分のファイルをつくったりするときに、ファイルのこの仕組みを意識すると、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)がいちじるしくすすみます。

このようにみると図1と図2は本質的な構造はおなじであり、表象という表層構造と、メッセージあるいは情報の本体という潜在構造とからなりたっています。

世の中にはいたるところに表象が存在します。たとえば交通標識も表象の一種です。商標やトレードマークも表象です。学校や会社など、それぞれの組織にはそれぞれのシンボルマークがあります。国旗も表象です。表象なくして世の中はなりたちません。表象は重要です。

表象の製作者はおもいをこめて表象をつくります。それぞれの表象はそれぞれにメッセージをつたえています。わたしたちは表象をみてそのメッセージをつかみ、その意図を理解します。表象にはインデックスの機能があります。

表象は、メッセージを圧縮・統合して視覚的に相手につたえるという働きをもっています。いいかえると表象をつくろうとおもったら、情報を圧縮・統合しなければなりません。これはアウトプットの本質でもあります。




また、特別展「運慶」の会場にいったら、いくつかの仏像が空間配置されているという例がありました。複数の表象があつまって精神世界の見取り図あるいはもっと高次元のメッセージをつたえていました。

このように、いくつかの表象があつまると点的な情報が構造的な情報になり、空間的な大きな認識ができます。認識の次元があがります。ひとつの表象を認識したり、つくったりすることのつぎに、表象をくみあわせるという段階があります。これは、ファイルの結合さらに構造化という、より高度な情報処理になります。


▼ 注1:参考記事
興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」(東京国立博物館)(まとめ)

東京国立博物館 − 歴史をフィールドワークする − (記事リンク集)