仏像の5大分類を念頭において展示室をまわれば、多様で複雑な世界もわかりやすくなります。
興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」が東京国立博物館で開催されています(注1)。展示室は3章構成になっていて、つぎのような仏像をみることができます。
東京国立博物館 − 歴史をフィールドワークする − (記事リンク集)
▼ 注1:興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」
第1章 運慶を生んだ系譜 -康慶から運慶へ-阿弥陀如来
毘沙門天地蔵菩薩
大日如来
四天王
法相六祖第2章 運慶の彫刻 -その独創性-毘沙門天
阿弥陀如来
不動明王
地蔵菩薩
八大童子
大日如来無著菩薩世親菩薩聖観音菩薩四天王
大威徳明王第3章 運慶風の展開 -運慶の息子と周辺の仏師-観音菩薩勢至菩薩多聞天重源上人地蔵菩薩吉祥天十二神将
整理するとつぎのように分類できます。
- 如来:大日如来、阿弥陀如来
- 菩薩:聖観音菩薩、地蔵菩薩、勢至菩薩、無著菩薩、世親菩薩
- 明王:不動明王、大威徳明王
- 天 :毘沙門天、四天王、多聞天、吉祥天、十二神将
- 高僧:法相六祖、重源上人
如来とは、真如より来たれるものであり、仏陀と同意です。最初は釈迦のみをさしましたが、のちに、釈迦よりも以前の仏陀、未来にあらわれることが約束されている仏陀、十方世界の仏陀などがうまれました。
菩薩とは、みずから悟りをもとめるとともに、すべての衆生の救済のために修業をしている者をいいます。
明王とは、怒りの表情(忿怒の相)をしめすことで、普通の姿ではおしえがたい人々を おしえみちびく存在です。密教では、如来・菩薩・明王の3通りの姿に変化するとときます。
天とは、如来・菩薩・明王が衆生を救済する存在であるのに対して、仏法を守護する護法神あるいは福徳や財福をさずける福徳神です。インドのバラモン教やヒンドゥー教の神々を仏教にとりこんだものが多く、したしみを感じる仏像がたくさんあります。
高僧とは、釈迦の弟子や、仏教の発展や流布に貢献した著名な高僧です。
仏像の世界、東洋の精神世界は多様性に富んでいます。多様性をみとめることは東洋文明の特色ですが、一方で、複雑でわかりにくという面があります。そこでこのような「5大分類」を念頭において展示室をまわるようにすれば、「運慶」展がよりわかりやすくなるのではないかとおもいます。
仏像の5大分類 - 特別展「運慶」(東京国立博物館)(2)-
仏像と対面する - 特別展「運慶」(東京国立博物館)(3)-
興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」(東京国立博物館)(まとめ)
仏像の世界、東洋の精神世界は多様性に富んでいます。多様性をみとめることは東洋文明の特色ですが、一方で、複雑でわかりにくという面があります。そこでこのような「5大分類」を念頭において展示室をまわるようにすれば、「運慶」展がよりわかりやすくなるのではないかとおもいます。
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仏像には、インドから日本にいたる東洋の精神世界(心の世界)の、2千数百年にもおよぶ営みが投影されています。仏像は、東洋の精神世界の表象であるとかんがえてもよいでしょう。
目には見えない世界はどのようにしてとらえればよいか。非物質の世界は抽象的でとらえどころがありません。そこで仏像のおでましです。仏像は、本来は目には見えない世界を視覚化します。それぞれの仏像は、精神世界あるいは生命力のさまざまな側面をそれぞれに表象します。またいろいろな仏像があつまることによって精神世界の「見取り図」も提示し、心ゆたかに生きる秘訣をわたしたちにおしえてくれます。
今回の展覧会でも、それぞれの仏像からそれぞれにメッセージを感じとるとともに、それらの「見取り図」(空間配置)もしっかりみて、心のなかにとりこむ(記憶する)ようにするとよいとおもいます。
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