二次元と三次元のあいだをさまよいあるくことができます。
企画展「シャガール 三次元の世界」が東京ステーションギャラリーで開催されています(注)。シャガールの彫刻作品を日本で初めて本格的に紹介するという企画です。

画家・版画家として著名なマルク=シャガールは、多くの彫刻を晩年に制作していました。会場では、油彩・水彩・素描・版画などとあわせて彫刻を展示してあるため、二次元と三次元のあいだをさまよいあるくことができます。とくに下絵(二次元)と彫刻(三次元)がならべてある展示では、両者をみながらイメージトレーニングをすることができます。

二次元をみるときは、 三次元ではどうなるか、自分の心のなかでイメージすることになります。けっこうなイメージトレーニングになります。三次元ではリアルにみえるのでそのようなイメージは必要ありません。しかし彫刻には背景がありません。そこが絵画と決定的にちがうところです。彫刻では、背景は想像しなければなりません。これはかなりむずかしい行為です。

印象にのこったのは『鳥=魚』、鳥と魚が融合してあたらしい生物がうまれました。これは「キメラ」でしょう。おもしろいイメージ法です。古今東西をとわず人間はキメラを想像してきました。ヘビその他の複数の動物を融合させた竜もキメラの一例でしょう。ギリシャ神話のなかにもキメラがいるでしょう。想像すればよいのですから、どのようなキメラでもつくれそうですが、意味のあるものを想像するのは実際にはむずかしいです。

キメラは、ことなる情報をむすびつけて記憶するという記憶法としてもつかわれることもあります。

世の中には、ライオンとトラを融合させた「ライガー」、ウマとロバを融合させた「ラバ」などがいます。あるいは現代の生物学者たちは遺伝子を操作してキメラをつくりだすことを可能にしています。これは想像上のできごとではありません。生物学者あるいは医学者が芸術家まがいのことをやるかもしれません。おそろしいことです。

オカピという、シマウマと普通のウマとが融合したような動物がいますが、これはキメラではなく、キリンの仲間であり、キリンの先祖にちかい動物です。生物の進化は自然にまかせた方がよいでしょう。


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▼ 注
会場:東京ステーションギャラリー
会期:2017年9月16日〜12月3日