新疆ウイグル自治区キジル石窟第212窟の復元
(交差法で立体視ができます)
(交差法で立体視ができます)
再現空間のなかにはいって空間に心をくばるようにします。日常とはちがう体験ができ、心のチューニングもすすみます。
シルクロード特別企画展「素心伝心 -クローン文化財 失われた刻の再生-」が東京藝術大学美術館で開催されています(注1)。
ステレオ写真はいずれも交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
キジル石窟第212窟(航海者窟)の流出や紛争によって欠失した箇所を復元しています。敦煌から西へむかうシルクロードは、死の砂漠・タクラマカンを迂回して西域北道・西域南道に分岐します。このうち、北道のほぼ中央、現在のクチャ(庫車)一帯にさかえたのがこのギジル石窟を要する亀茲国(きじこく)でした。ギジル石窟は、敦煌とバーミヤンのあいだの最大規模の石窟群です。
キジル石窟第212窟には航海者がえがかれていて、彼の名はシュローナコーティカルナといい、宝をもとめて海へこぎだした商人であったといいます。彼がこぎだした海は現在でいうところのインド洋だったのでしょう。紀元前5世紀頃(?)のインド洋ではすでに交易がおこなわれていたようです。そしてすくなくとも紀元後1世紀までには季節風(モンスーン)を利用した航海法が発明され、アラビア半島とインド亜大陸を直接わたる航海がはじまりました。「海のシルクロード」の成立です。
海を生涯みることがなかった内陸の人々は「航海者」をみて海の世界を想像し、冒険心をかきたてられて心をおどらせたにちがいありません。
2001年に破壊されたアフガニスタン・バーミヤン東⼤仏の仏龕天井にえがかれていた壁画「天翔る太陽神」を復元しています。会場では、バーミヤンの風景(動画)が目の前にひろがり、臨場空間が体験できます。
バーミヤンはかつては、仏教文化の繁栄をあらわすように光かがやいており、玄奘三蔵もおとずれました。それをしめす東大仏立像がタリバンによって破壊されたときに、天井壁画もうしなわれてしまいました。
壁画の中央におおきくえがかれていたのは、アフガニスタン発祥ともいわれる「ゾロアスター教(拝火教)」の太陽神ミスラとされます。右手に槍をもち、遊牧民の長衣をきた姿がおおきな日輪を背にえがかれています。太陽神は、翼をもった4頭の天馬がひく黄金の馬車にのってあらわれます。
普通の美術展・展覧会では作品を順番にみていきます。これは対象を点的にとらえる方法です。
しかし今回はちがいます。周辺視野もつかって大きな視野で空間をみます。大観するといってもよいでしょう。これはひろがりをとらえるのであって要約とも単純化ともちがいます。空間に心(意識)をくばるのです。「空間配心」です。ここに、日常とは味わいがことなる体験があります。
わたしたちは学校であるいは職場で集中力が必要だとおしえられてきました。集中とは対象を点的にとらえる方法です。
しかし集中があるならその反対の分散もあります。分散とは、特定の対象にとらわれずに、その空間全体に心をくばることです。このような「分散配心」があってもいいはずです。実際には、旅行にでかけて風景をみるときには誰もがこのようなことをやっています。「分散配心」は「まるごとインプット」といってもいいかもしれません。今回の美術展ではこのような体験ができます。
日本社会は集中に重点をおきすぎています。だからつかれてきます。ストレスがたまります。ひとつのことにしばらく集中したら、今度は空間に心をくばるようにするとよいでしょう。そのほうが心のバランスもとれるのではないでしょうか。
▼ 注1
※ 一部をのぞき写真撮影が許可されていました。
▼ 参考文献
『シルクロード特別企画展「素心伝心」』(解説書)東京藝術大学、2017年9月13日
ステレオ写真はいずれも交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -
新疆ウイグル自治区キジル石窟第212窟の復元
新疆ウイグル自治区キジル石窟第212窟の復元
キジル石窟第212窟(航海者窟)の流出や紛争によって欠失した箇所を復元しています。敦煌から西へむかうシルクロードは、死の砂漠・タクラマカンを迂回して西域北道・西域南道に分岐します。このうち、北道のほぼ中央、現在のクチャ(庫車)一帯にさかえたのがこのギジル石窟を要する亀茲国(きじこく)でした。ギジル石窟は、敦煌とバーミヤンのあいだの最大規模の石窟群です。
キジル石窟第212窟には航海者がえがかれていて、彼の名はシュローナコーティカルナといい、宝をもとめて海へこぎだした商人であったといいます。彼がこぎだした海は現在でいうところのインド洋だったのでしょう。紀元前5世紀頃(?)のインド洋ではすでに交易がおこなわれていたようです。そしてすくなくとも紀元後1世紀までには季節風(モンスーン)を利用した航海法が発明され、アラビア半島とインド亜大陸を直接わたる航海がはじまりました。「海のシルクロード」の成立です。
海を生涯みることがなかった内陸の人々は「航海者」をみて海の世界を想像し、冒険心をかきたてられて心をおどらせたにちがいありません。
バーミヤン東⼤仏天井壁画「天翔る太陽神」の復元
バーミヤン東⼤仏天井壁画「天翔る太陽神」の復元
2001年に破壊されたアフガニスタン・バーミヤン東⼤仏の仏龕天井にえがかれていた壁画「天翔る太陽神」を復元しています。会場では、バーミヤンの風景(動画)が目の前にひろがり、臨場空間が体験できます。
バーミヤンはかつては、仏教文化の繁栄をあらわすように光かがやいており、玄奘三蔵もおとずれました。それをしめす東大仏立像がタリバンによって破壊されたときに、天井壁画もうしなわれてしまいました。
壁画の中央におおきくえがかれていたのは、アフガニスタン発祥ともいわれる「ゾロアスター教(拝火教)」の太陽神ミスラとされます。右手に槍をもち、遊牧民の長衣をきた姿がおおきな日輪を背にえがかれています。太陽神は、翼をもった4頭の天馬がひく黄金の馬車にのってあらわれます。
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普通の美術展・展覧会では作品を順番にみていきます。これは対象を点的にとらえる方法です。
しかし今回はちがいます。周辺視野もつかって大きな視野で空間をみます。大観するといってもよいでしょう。これはひろがりをとらえるのであって要約とも単純化ともちがいます。空間に心(意識)をくばるのです。「空間配心」です。ここに、日常とは味わいがことなる体験があります。
わたしたちは学校であるいは職場で集中力が必要だとおしえられてきました。集中とは対象を点的にとらえる方法です。
しかし集中があるならその反対の分散もあります。分散とは、特定の対象にとらわれずに、その空間全体に心をくばることです。このような「分散配心」があってもいいはずです。実際には、旅行にでかけて風景をみるときには誰もがこのようなことをやっています。「分散配心」は「まるごとインプット」といってもいいかもしれません。今回の美術展ではこのような体験ができます。
日本社会は集中に重点をおきすぎています。だからつかれてきます。ストレスがたまります。ひとつのことにしばらく集中したら、今度は空間に心をくばるようにするとよいでしょう。そのほうが心のバランスもとれるのではないでしょうか。
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▼ 注1
会場:東京藝術大学美術館
会期:2017年9月23日〜10月26日※ 一部をのぞき写真撮影が許可されていました。
▼ 参考文献
『シルクロード特別企画展「素心伝心」』(解説書)東京藝術大学、2017年9月13日