常識にとらわれずに、次元をかえてかんがえてみる時代にはいりました。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』(2017年10月号)の連載「科学革命前夜」第2回では、「高次元空間をみつけだせ!」と題して、4次元をこえる「かくれた次元」について解説しています。世界(宇宙)は3次元空間であるというこれまでの常識がくつがえるかもしれません。



この世界の空間の一部をどんどん拡大していくと、ある大きさまでは、縦・横・高さの三つの方向がある3次元空間です。(中略)

原子核(陽子)よりもさらに小さな世界では、あるところから空間そのものが4次元以上の高次元空間になると考えられています。(中略)私たちに見える3次元空間にカラビ=ヤウ空間のような6次元空間がかくれていた場合、空間は合計で9次元になります。何次元の空間が、どのような大きさでかくれているかは、わかっていません。


「次元」とは、簡単にいうと、その空間中に存在する物体が移動できる方向のことです。わたしたちの世界(宇宙)は、3つの方向に移動できるので3次元空間であると普通にはかんがえられています。

しかし物理学者たちは、「高次元空間」が存在するという仮説をたてて、実験によりこれを検証しようとしています。




わたしたちは3次元空間を認知しているため、そのなかにある物体も3次元構造をもつものと認知します。たとえば円柱を認知することができます。

しかしたとえば2次元空間にすむ「2次元人」がいたとすると、2次元には高さがないため円柱をみることはできません。円柱の影がみえるだけです。具体的には円がみえます。円がひきのばされてみえます。長方形がみえます。すると2次元人の物理学者は、何らかの物体が3次元において運動していて、その影をみているのではないかとかんがえるわけです。

このようなことから類推すると、わたしたち人間(3次元人)がみている物体や現象も、もっと高次元の現象の「影」に相当するものをみているのではないかという仮説がたてられます。

物理学の「超ひも理論」では、世界(宇宙)は実際には「9次元空間」であることが有力視されていて、わたしたち人間がくらす3次元空間はそこにある膜のような「ブレーン」だとかんがえられています。




人間がおこなう情報処理の観点からみると、次元があがるほど高度な情報処理が必要になります。

たとえば物事を点でとらえる認識は0次元です。要点をとらえます。要素だけをとらえます。キーワードだけをひっぱりだしてくるようなことです。つぎに物事を、線的(直列的)なながれととらえると1次元の認識になります。さらに、地図上でその移動をとらえると2次元(平面)の認識になります。そして、上下の移動もとらえると3次元の認識になります。建物にはいると、上の階にいったり地階にいったりするでしょう。あるいは対象の3次元構造をとらええたり、世界(宇宙)の階層構造を認識したりします。

  • 0次元:要点、要素
  • 1次元:線的なながれ
  • 2次元:地図上の移動
  • 3次元:階層構造

次元がたかまるほど高度な情報処理になり、認識がよりふかまります。

一方で、物事が複雑すぎてわけがわからないというときには、次元をさげてかんがえてみるとよいです。「2次元人」になってみます。それでもわからない場合は、さらに次元をさげてみます。

こうして次元を意識するならば、物事の要点や要素をつかむことは情報処理の第一歩(初歩)として重要であることがわかります。

いずれにしても3次元空間という固定観念から脱却した自由な思考が今もとめられているといえるでしょう(注)。


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▼ 参考文献
『Newton』(2017年11月号)ニュートンプレス、2017年9月26日

▼ 注
情報処理その他において、3次元をこえる「高次元空間」が利用できたらどんなにいいかというかんがえもでてきます。高次元空間が利用できたら、これまでにはむずかしかったことが簡単にできたりするでしょう。文字通り「次元があがる」のです。