よくできた植物画をみると植物の特徴や構造がよくわかります。実物や写真とともに植物画もみるとよいです。
企画展「フローラヤポニカ - 日本人が描いた日本の植物 -」 が国立科学博物館で開催されています(注)。

世界でもっとも著名な植物園であり世界遺産にも登録されている英国キュー王立植物園で、2016年9月から2017年3月にかけて「日本人画家が描いた植物画展」が開催されました。これを記念してこのなかから、えりすぐりの植物画を紹介・展示しています。

日本列島には約6700種の陸上植物が自生しており、そのうち約1800種が日本だけに生育している日本固有の植物です。本展をみれば、このゆたかな植物多様性がよくわかります。 

また『カーティスのボタニカルマガジン』という、1787年に英国で創刊され、230年をへた今日でも刊行されつづけている植物学の専門誌のなかから、何枚かの原画が、キュー王立植物園以外でははじめて公開されています。


四季をいろどる植物
 キリ、イロハモミジ、ヤブツバキ、ウンシュウミカンなど
日本の固有種
 ハマギク、ホオノキ、シラネアオイ、コウヤマキなど
絶滅危惧種
 ヤマシャクヤク、ホソバシャクナゲ、サンショウバラ、エゾウスユキソウなど
東日本大震災
 「奇跡の一本松」(アイグロマツ)


それぞれの植物画は、それぞれの植物の特徴をよくとらえて、重要な部分を強調しているのでわかりやすく、植物の微細構造から全体構造までを理解することができます。

植物画のような写実絵画はまるで写真のようです。しかし写真とはちがいます。写実絵画は、ありのままに対象をえがいたものですが、実際には、本物以上に "本物的" なのです。ここがおもしろい! たとえば本物もうつくしいのですが、写実絵画ではさらにうつくしくなっています。それで「一目ぼれ」してしまう人がでてきます。

写実画家は対象をまず観察します(インプット)。すると情報が、画家の心のなかにはいってきて、心のなかをとおりぬけます。このときに取捨選択がおこります。そして画家は、そのとおりぬけてきたイメージをアウトプットします。みずからのプロセシングの結果をアウトプットしているのです。ただしあくまでも事実を反映しています。創作はありません。

このように写実絵画は、対象をそのままうつしとったものではなく、写真とはちがいます。しかしまるで写真のようなのです。奥ぶかい世界がひろがっています。




本展で紹介されているようなすぐれた植物画をみて、そして植物の写真あるいは実物をみると植物に関する認識が急激にふかまります。写真あるいは実物をみていたときにはわからなかったポイントがわかってきます。

おなじようなことは、動物でも民族でも乗り物でも、あらゆる対象についてなりたちます。このような観点から、よくできた図鑑はとても役立つといえます。

あるいは Google マップというアプリをつかったことがあるとおもいます。地図と航空写真を瞬時にきりかえてみられる便利なアプリです。地図は、道路や鉄道などの交通機関をやや強調していえがいています。航空写真をそのままえがいたのではありません。航空写真とともに地図をみるとポイントがよくわかります。地図と航空写真をくみあわせる効果はとても大きいです。


▼ 注