長期観察、基金設立、エコツアー、緩衝地帯などの方法により、自然保護・環境保全がすすめられます。
『ナショナル ジオグラフィック日本版』(2017年9月号)では「彼女が愛し、守ったゴリラたち」と題して、ゴリラの保護活動をした霊長類学者ダイアン=フォッシーの偉業と、その後の経緯について解説しています。



ダイアン・フォッシーは(中略)、1960年代末、ナショナル ジオグラフィックの支援を受けてアフリカにやって来た。彼女がフィールドとしたビルンガ山地はルワンダ、ウガンダ、コンゴにまたがり、生息するマウンテンゴリラの数は、1973年には275頭を下回っていたが、現在は480頭ほどにまで回復している。


1967年、ダイアン=フォッシーはビルンガ山地に研究拠点「カリソケ」をひらいて、ゴリラの長期観察をはじめました。フォッシーの研究と活動は18年におよび、情愛あふれるゴリラの姿と社会を世界の人々に紹介しました。

50年後の今日、「ダイアン・フォッシー国際ゴリラ基金」(注1)が彼女の研究と保護活動をひきついでいて、ビルンガ山地一帯は、世界有数のゴリラ研究のフィールドとなっています。ダイアン・フォッシー国際ゴリラ基金は、ゴリラの調査、わなの撤去、自然保護教育プログラムなどを継続的に実施しています。

また2016年には、3万人をこす観光客がルワンダをおとずれ、1時間限定のゴリラ見学ツアーに参加するために、一人当たり9万円ちかくを当局に支払っているそうです。こうした収入は、ゴリラ保護の活動資金になっています。エコツアーの好例です。

ルワンダ政府は、ゴリラ生息地である国立公園から住民や家畜・畑をはなれた場所に移動させ、国立公園と住民居住区とのあいだに緩衝地帯をもうける計画をもっています。緩衝地帯をもうけるという方法は、自然保護・環境保全活動におけるもっとも現実的ですぐれたやり方だとおもいます。あとは、地域住民の理解をいかにえるかです。

人間の活動が原因で、野生の霊長類の約6割が絶滅にむかっています。ビルンガ山地のゴリラは個体数はふえていますが絶対数はいまだにすくなく、絶滅の危機にあることにはかわりありません。継続的な活動が今後とも必要です。



1985年12月26日、ダイアン=フォッシーは研究拠点カリソケで何者かによって殺害されました。密猟者が犯人ではないかといわれています。

しかし命をかけてゴリラをまもった彼女の志は後継者たちにうけつがれ、今日、成果をうみだしつつあるのです。

フォッシーの生涯は、『愛は霧のかなたに』(マイケル=アプテッド監督、シガニー=ウィーバー主演、アメリカ合衆国)として1988年に映画化されています。


▼ 注1
The Dian Fossey Gorilla Fund

▼ 参考文献
ナショナルジオグラフィック編集部『ナショナル ジオグラフィック日本版』(2017年9月号)、日経ナショナルジオグラフィック社、2017年8月30日