原子以外の何かでできた物質「ダークマター」が検出されたら科学革命がおこり、宇宙観がかわります。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』(2017年10月号)の新連載「科学革命前夜」(第1回)では、「ダークマターの正体に迫る」と題して謎の物質「ダークマター」についてくわしく解説しています。
ダークマターが検出されると、「あらゆる物質は原子でできている」という科学の常識がくつがえされることになります。
ダークマターの特徴はわたしたち人間には見えないということです。
そもそも見るということは、物質が放出したり反射した可視光線(電磁波の一部)を目がとらえ、その情報を脳が処理して認知するということです。現在では、目には見えない電波やX線などのどんな波長の電磁波でも、物理的な機器をつかって観測することができるようになっています。
しかしダークマターは電磁波をだすことはなく、それを反射したり吸収したりすることもないため、従来の機器では観測することはできません。
またダークマターは、普通の物質とは基本的にぶつかることがなく、地球だろうが人体だろうがおかまいなしにすりぬけてしまうようです。このようなものが、わたしたちの周囲にも、地球のまわりにもとびかっているという仮説がたてれれています。宇宙全体では、普通の物質の5〜6倍もの質量のダークマターが存在するとかんがえられています。
わたしたち人間は、外界の情報の大部分を光(視覚)によってえています。光は電磁波の一種です。またさまざまな機器を発明して、光以外の波長の電磁波をとらえたり、つかえるようになり、宇宙を観測したり、通信をしたりしています。わたしたち人間は、電磁波に高度に依存した情報処理をしているのであり、わたしたちの生活は電磁波なしではなりたちません。
しかし電磁波ではとらえられないダークマターという物質や現象があるということになると、わたしたちがこれまでに認知してきた宇宙はいったいどうなるのでしょうか? 宇宙像を大幅にえがきなおさなければならなくなるでしょう。わたしたち人間には本当の宇宙の姿は見えていなかったということになります。
わたしたちが見てきた宇宙は電磁波をとおして知覚した世界でしかなかったのです。電磁波に依存した宇宙といってもよいかもしれません。宇宙像や世界像は、人間独自の感覚器官と情報処理の仕組みによって、人間がえがきだしたイメージにすぎなかったのではないでしょうか。それは、「人間の宇宙」「人間の世界」だったといってもよいかもしれません。
現在、物理学者たちが、ダークマターを検出するためにあらゆる努力をはらっています。もし、ダークマターが検出されたら、それは科学革命になることはまちがいありません。電磁波による知覚の限界をこえることになります。あたらしい宇宙観がうまれます。今後の観測・研究がたのしみです。
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▼ 参考文献
『Newton』(2017年10月号)ニュートンプレス、2017年10月7日
宇宙には「原子以外の何かでできた物質」が大量に存在しているようなのです。その物質は「ダークマター」とよばれています。正体はいまだに不明ですが、「初検出」への期待は日に日に高まっています。
銀河の質量は、銀河団を構成する個々の銀河の運動速度などから推定することができますが、目に見える物質だけでは銀河団の質量をまかなえないのです。そこで何らかの目に見えない物質が、銀河団に分布していると考えられるようになりました。それが「ダークマター」です。
ダークマターが検出されると、「あらゆる物質は原子でできている」という科学の常識がくつがえされることになります。
ダークマターの特徴はわたしたち人間には見えないということです。
そもそも見るということは、物質が放出したり反射した可視光線(電磁波の一部)を目がとらえ、その情報を脳が処理して認知するということです。現在では、目には見えない電波やX線などのどんな波長の電磁波でも、物理的な機器をつかって観測することができるようになっています。
しかしダークマターは電磁波をだすことはなく、それを反射したり吸収したりすることもないため、従来の機器では観測することはできません。
またダークマターは、普通の物質とは基本的にぶつかることがなく、地球だろうが人体だろうがおかまいなしにすりぬけてしまうようです。このようなものが、わたしたちの周囲にも、地球のまわりにもとびかっているという仮説がたてれれています。宇宙全体では、普通の物質の5〜6倍もの質量のダークマターが存在するとかんがえられています。
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わたしたち人間は、外界の情報の大部分を光(視覚)によってえています。光は電磁波の一種です。またさまざまな機器を発明して、光以外の波長の電磁波をとらえたり、つかえるようになり、宇宙を観測したり、通信をしたりしています。わたしたち人間は、電磁波に高度に依存した情報処理をしているのであり、わたしたちの生活は電磁波なしではなりたちません。
しかし電磁波ではとらえられないダークマターという物質や現象があるということになると、わたしたちがこれまでに認知してきた宇宙はいったいどうなるのでしょうか? 宇宙像を大幅にえがきなおさなければならなくなるでしょう。わたしたち人間には本当の宇宙の姿は見えていなかったということになります。
わたしたちが見てきた宇宙は電磁波をとおして知覚した世界でしかなかったのです。電磁波に依存した宇宙といってもよいかもしれません。宇宙像や世界像は、人間独自の感覚器官と情報処理の仕組みによって、人間がえがきだしたイメージにすぎなかったのではないでしょうか。それは、「人間の宇宙」「人間の世界」だったといってもよいかもしれません。
現在、物理学者たちが、ダークマターを検出するためにあらゆる努力をはらっています。もし、ダークマターが検出されたら、それは科学革命になることはまちがいありません。電磁波による知覚の限界をこえることになります。あたらしい宇宙観がうまれます。今後の観測・研究がたのしみです。
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▼ 参考文献
『Newton』(2017年10月号)ニュートンプレス、2017年10月7日