江戸後期の絵師・川原慶賀は、博物学的に価値のある魚の絵を多数えがきました。
「すギョいです。目を見張るがかりの素晴らしいお魚たちです」

『ナショナルジオグラフィック』(2017.8号)では「さかなクンの江戸水族館へようこそ」と題して、江戸後期の絵師・川原慶賀がえがいた魚の絵を紹介しています(注)。そのおどろくべき精巧さ、一見の価値があります。


川原慶賀は長崎の町絵師で、1823年に来日したフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトのために日本の風景、風俗、動植物を多く描いた。そのうち、オランダのナチュラリス生物多様性センターには、慶賀の筆とされる魚類259点、哺乳類4点、甲殻類など53点がのこる。

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色彩・模様・形・大きさ・鱗の数など、実にこまかく正確にえがかれています。学術的な価値が十分あるそうです。たとえばアンコウ(クツアンコウ)は、体の縁にずらりと並ぶひらひらした「皮弁」や口内の斑点などの特徴が詳細にとらえられています。

そのほか、ギンザメ、アカナマダ、ウツボ、アサヒガニ、セミホウボウ、ニホンアシカ、シイラ、コブダイ(カンダイ)、チョウチョウウオナドなど、あざやかな絵が掲載されています。

これらはその後の、日本の博物学の発展を予感させるものです。このような冷徹な観察と正確な記載が、博物学そして科学の発展の基礎になりました。


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▼ 注
『ナショナルジオグラフィック(日本版)』2017年8月号、日経ナショナルジオグラフィック社
※ 2号連載企画「日本列島、すぐそばの生命」として、「海を渡った日本の動物」と「さかなクンの江戸水族館へようこそ」が掲載されています。これらの記事が日本語版だけのものなのか、オリジナル英語版にも掲載されているのかどうかは知りませんが、『ナショナルジオグラフィック』で日本に関する記事をよむと、グローバルな視点から客観的に日本をとらえなおすことができます。日本のなかにいるだけのときとはちがう印象をえることができます。よい企画です。