自分に適した手引書にめぐりあって、一生の思い出をつくるようにするとよいです。
美術館・博物館というと企画展・特別展が注目されがちですが、常設展も見のがせません。常設展をたのしむためには、ガイドブック(手引書)を事前に見てから行くとよいです。たとえば国立西洋美術館には公式ガイドブックがあります(注1,2)。

わたしはかつて、ウィーン美術史美術館に行ったことがありました。そこは宝の山で、見るべき作品は無数にあり、端から端までやみくもに見ていきました。しかしあとになって、これといっておもいだせるものはなく、のこったのは疲れだけ、印象のうすい体験になりました。

そこで気がついたのは、美術館に行く前に手引書をよく見て "お気に入り" をえらんでおき、美術館に行ったら、本当に見たい作品をじっくりながめるのがよいということです。たくさんの名作のなかからいくつかを選択し、それらをしっかり味わう経験をつんでいくうちに、目を閉じてもおもいだせる、心にのこる作品が蓄積されてきます。

そのあとで、もういちど手引書を見なおすと、その名作が心の友になっていることに気がつきます。美術館での体験は一生の思い出になります。

人生とおなじで、自分に適した手引書にめぐりあえるかどうかは決定的に重要なことです。 

美術館や博物館の常設展は、いつでも見られるとおもっているとけっきょく見られません。手引書をみたら、時間をつくって見に行くべきです。一生に一度の思い出は常設展でもつくることができます。


▼ 注1
国立西洋美術館著『国立西洋美術館 公式ガイドブック』淡交社、2009年7月31日
セブン&アイ出版著『国立西洋美術館を遊びつくす』(saita mook)セブン&アイ出版、2017年4月26日 ▼注2
国立西洋美術館

▼ 参考図書
『地球紀行 世界美術館の旅』(小学館 GREEN MOOK)小学館、2002年9月12日