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遮光器土偶(縄文時代晩期、前1000〜前400年)
(東京国立博物館本館、平行法で立体視ができます) 
(1)引いて見よ!(2)寄って見よ!(3)名を付けよ!。「問題解決の3段階」としてモデル化できます。
東京国立博物館のミュージアムシアターで『DOGU 縄文図鑑でめぐる旅』が上演されています(注1)。考古学者の視点で土偶や土器を観察し、東京国立博物館の縄文展示(考古展示)をもっとたのしもうという企画です。

縄文時代は、今から約13000年前にはじまり、1万年以上もつづいたながい時代です。当時の人々は、家をたててすみ、木の実をあつめ、狩りをし、手にいれた食料を土器で料理して食べて生活していました。縄をつかってつけた文様(模様)が土器についているので縄文土器とよばれています。

土偶はしゃべりません、うごきません。しかし土偶を見る目をもてば、聞く耳をもてば、土偶はかたりはじめます。 そのための方法を、東京国立博物館考古室主任研究員の品川欣也さんが紹介しています。「品川流! 考古資料の楽しみ方」です。

 (1)引いて見よ!
 (2)寄って見よ!
 (3)名を付けよ!

まずは、土偶や土器から引いて展示全体を見てみましょう。とおくから見て全体的な雰囲気を味わってください。それぞれを比較することもできます。大きさや色・形の類似点・相違点がわかります。お気に入りの土偶や土器もさがしてください。

つぎに、そのお気に入りの土器や土器に寄って見てみましょう。ちかづいてじっくり観察します。細部のつくりや模様はどうなっているでしょうか。けっこう精巧にできています。質感はどうでしょうか。

そして、その土偶や土器に名前をつけてみましょう。ニックネームでよいす。特徴をつかんで、オリジナルな名前を自由に発想してみます。



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遮光器土偶(縄文時代晩期、前1000〜前400年)
(東京国立博物館平成館、平行法で立体視ができます)



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火焔型土器(縄文時代中期、前3000〜前2000年)
(東京国立博物館本館、平行法で立体視ができます)




この3段階の方法は、縄文時代の土偶や土器にかぎらず、博物館のあらゆる展示を見るときにつかえます。実際には、博物館の展示にかぎらず、あらゆる対象、あらゆる課題についてつかえる普遍的なすぐれた方法です。(1)全体を見て、(2)部分を見ると、(3)それまで以上に全体がよく見えてきます。

第1段階で全体を見たら、あなたの "お気に入り" をさがすことをわすれないでください。それが、あなたの "専門分野" になります。第2段階では、単眼鏡 などの道具(機器)を工夫してつかうとさらに細部がよくわかります。第3段階で、物事の特徴をつかめば問題の核心や本質がつかめるかもしれません。

こうして、この3段階はモデル化することができ、「問題解決の3段階」として発展していきます。3段階をまずは自覚するだけでもすぐに効果があらわれてくるでしょう




縄文人は、とても高度な土偶や土器をつくっていました。このような土偶や土器はおもいので、これらをもって移動していたとはかんがえられず、縄文人は基本的に定住生活をしていたことが想像できます。またこれらの土偶や土器は非常にすぐれた芸術品でもありました。縄文時代には、従来かんがえられていた以上に高度な文化が発達していたことがわかります。

しかもその文化は、自然環境と人間が共生する文化でした。環境破壊をすすめる現代人がまなばなければならない文化です。


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東京国立博物館 − 歴史をフィールドワークする − (記事リンク集)

▼ 注1
東京国立博物館ミュージアムシアター『DOGU 縄文図鑑でめぐる旅』