よくできた一覧表をつかって構造的・空間的に情報を検索すると情報処理がすすみます。
『完全図解 周期表』(ニュートン別冊)は元素と周期表について豊富なイラストでわかりやすく解説しています。




自然界でもっとも大きなレベルは宇宙です。宇宙には銀河があり、銀河には、太陽のような恒星が無数に存在します。その太陽のまわりをまわるのが地球などの惑星です。地球には生物がくらし、生物の体は細胞から形づくられ、細胞にかぎらずすべての物質は分子の集合体であり、分子は原子からなり、原子は原子核と電子からなり、原子核は中性子と陽子からなり、中性子と陽子はクォークからなります。このように自然界は階層構造によってなりたっています。

このような宇宙を構成するものはすべて物質でできていて、物質の基本的な要素が原子です。そして原子と元素はどうちがうのか? 原子とは、実際の物質を構成する具体的な要素であり、それに対して元素とは、性質をあらわす抽象的な概念のことです。

元素には、何らかの周期性(法則性)があることがふるくから知られていましたが、うまく説明できませんでした。しかし1869年に、ロシアの科学者メンデレーエフが元素の周期表をついにつくりだしました。メンデレーエフの周期表は、すこしずつ形をかえながらも大きな書きなおしにせまられることはなく、化学の「ガイドマップ」として重要な役割を今でもはたしつづけています。

周期表がもしなかったら、化学のどんなことをかんがえるにしても、それぞれの元素について性質や反応性を一つ一つ個別にしらべ、またおぼえていかなければなりません。しかし周期表があるので全体像がわかり、目的の元素の位置づけもわかり、勉強や研究の見通しもたちます。




このように周期表は、化学情報の検索システム(インデックス)としての役割をはたしています。このようなシステムは、グーグルなどのキーワード検索とはちがい、一覧表という構造をつかった空間的な情報検索の仕組みになっています。体系的検索といってもよいでしょう。

たとえば、日本語の単語をしらべる場合、あいうえお順に単語が配列した国語辞典をつかう方法と、意味の体系によって構造的に単語を配列した類語辞典をつかう方法があるでしょう。周期表は類語辞典に相当します。

一例として、大野晋・浜西正人著『類語国語辞典』(角川書店)を是非みてください。


類語の見事な一覧表が掲載されています。構造的・空間的な単語の位置をみながら、その周辺で、似た意味をもつ言葉をみつけることができます(注)。これは空間をつかった情報検索であり、あいうえお順やグーグル検索とはちがう方法であることに気がついてください。

わたしは、この空間をつかった情報処理の方が発想がうまれやすいとかんがえています。あいうえお順やグーグルももちろん必要であり役立ちますが、あわせて、よくできた図表をつかった空間的な方法も実践するとよいでしょう。情報処理がいちじるしく加速します。

高校の化学の時間に周期表(の上の方)をおぼえさせられた人がいるとおもいます。周期表をおぼえるということは、実は、空間をつかった情報処理に通じていたのであり、そこには、あらゆる分野に応用できるすぐれた方法が潜在していたのです。


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▼ 参考文献
『完全図解 周期表』(ニュートン別冊)ニュートンプレス、2017年7月2日

▼ 注
類語辞典も階層構造になっています。