(平行法で立体視ができます)
ユーモラスな地獄をみて、誰もがほっとしてかえっていきます。
「暑い夏は美術館で地獄めぐり!」
特別展「地獄絵ワンダーランド」が三井記念美術館で開催されています(注1)。日本につたわる地獄絵を紹介、日本人がいだいてきた死生観・来世観をたどります。
第2章「地獄の構成メンバー」
特別展「地獄絵ワンダーランド」が三井記念美術館で開催されています(注1)。日本につたわる地獄絵を紹介、日本人がいだいてきた死生観・来世観をたどります。
第1章「ようこそ地獄の世界へ」
■ 展示室1
水木しげるの絵本『水木少年とのんのんばあ』の原画をみます。水木しげるは、鳥取県境港で少年期をすごし、実家のお守り役にきていた「のんのんばあ」から妖怪や地獄の話をきき、それが原体験になりました。
■ 展示室2
平安時代(10世紀)に比叡山で修行した恵心僧都源信は『往生要集』をあらわしました。この中で地獄をはじめ六道のありさまを説きました。
■ 展示室3
仏教の宇宙観である須弥山図で地獄の位置を確認します。■ 展示室4
地獄は六道、すなわち地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人・天のひとつです。六道絵でリアルにみることができます。地獄は本当におそろしいところです。できればいきたくありません。
第2章「地獄の構成メンバー」
■ 展示室4
冥界の主とされる閻魔大王をはじめ、地獄の構成メンバーは多彩です。
第3章「ひろがる地獄のイメージ」
■ 展示室5
北野天神縁起などのように、実際に地獄を見聞して蘇生したという話が流布し、これが各地の寺社縁起絵や高僧伝絵などにとりいれられました。
■ 展示室6
熊野観心十界曼荼羅の影響のもとにえがかれた心字絵馬や心字曼荼羅また双六などを、小さな閻魔像とともにみます。
第4章「地獄絵ワンダーランド」
■ 展示室7
漫画チックでユーモラスな地獄絵の世界です。恐怖や畏れを超越しています。
現代では、科学者がかんがえだした宇宙観が一般的にうけいれられています。意外にも、最先端をいく科学者は自由な心の世界をもっています。
しかし昔の人々がやったように、その宇宙観のなかに価値観や人生観をくみこむまでにはまだいたっていません。あたらしい精神活動は今後の人類の課題といえるでしょう。
しかし言葉ではあらわせない素朴でほのぼのとした世界もあるのです。二項対立に決着をつけるという生き方ではなく、ユーモアで対立を解消する道もあることをおしえています。
「展示室7」に到達して、誰もがほっとしてかえっていく。何ともにくい企画でした。
▼ 注1
特別展「地獄絵ワンダーランド」
三井記念美術館
▼ 関連書籍
*
昔の人々は、実に多彩に多様にイメージをふくらませて世界観・宇宙観をつくりだしました。そしてつくりだした広大なイメージに価値観や人生観をくみこんでいきました。人の世界(この世)はとてつもなくちいさな世界でしかありませんでした。そこには、言葉ではなくイメージをベースにした精神活動がありました。自由な心の世界がひろがっていました。
現代では、科学者がかんがえだした宇宙観が一般的にうけいれられています。意外にも、最先端をいく科学者は自由な心の世界をもっています。
しかし昔の人々がやったように、その宇宙観のなかに価値観や人生観をくみこむまでにはまだいたっていません。あたらしい精神活動は今後の人類の課題といえるでしょう。
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これだけ科学が発達した時代に「地獄だなんてくだらない」という人がいるかもしれませんが、内心では誰もが、地獄にはおちたくないとおもっています。地獄は本当にいやなところです。
地獄といえば極楽です。誰もが極楽にいきたい。極楽を経験したい。極楽と地獄は二項対立の典型です。人間には、二項対立をベースにして物事をかんがえる癖があります。 光と影、幸福と不幸、成功と失敗、勝利と敗北・・・。そして "光" の方向にいけるように努力します。たとえば失敗しても、「失敗をとおしてしかまなべないことがあるんだよ」などといって頑張ります。
誰もが地獄からぬけだしたい。極楽をめざそう。
ところが会場の「展示室7」にはいってみたら、「ユーモラスな地獄」があるではないですか。あきらかにこれは矛盾しています。ふざけている!
誰もが地獄からぬけだしたい。極楽をめざそう。
ところが会場の「展示室7」にはいってみたら、「ユーモラスな地獄」があるではないですか。あきらかにこれは矛盾しています。ふざけている!
しかし言葉ではあらわせない素朴でほのぼのとした世界もあるのです。二項対立に決着をつけるという生き方ではなく、ユーモアで対立を解消する道もあることをおしえています。
「展示室7」に到達して、誰もがほっとしてかえっていく。何ともにくい企画でした。
▼ 注1
特別展「地獄絵ワンダーランド」
三井記念美術館
▼ 関連書籍