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会場入口付近(平行法で立体視ができます)
 
静止画がうごきだし、二次元が三次元になり、映像と物語と音楽が共鳴します。
日本科学未来館で、企画展「ディズニー・アート展 -いのちを吹き込む魔法-」が開催されています(注)。ミッキーの誕生から最新作『モアナと伝説の海』まで、キャラクターにいのちをふきこんできた約90年におよぶディズニーの歴史をオリジナル原画をみながらたどることができます。

たとえば「マルチプレーン・カメラ」。この技術開発により二次元の世界が三次元になりました。それまでの映像では、家にちかづいていくと背後の月も一緒に大きくなっていましたが、新技術では、家は大きくなりますが月の大きさは変わりません。動画をみていると三次元の世界にいるように感じられます。

マルチプレーン・カメラは、カメラと最後部の月の絵は固定し、それらのあいだに平行に配列した何枚かの絵をことなる速度でうごかすことにより三次元の奥行きを表現するという仕組みでした。80年前の『白雪姫』や『ピノキオ』から採用され大きな威力を発揮しました。

『ふしぎの国のアリス』(1951)では、カラフルな色彩、奇想天外な動きをみごとに表現し、長編映画化に成功しました。『ふしぎの国のアリス』は中期ディズニーの代表作になりました。

そして『リトルマーメイド』(1989)。この作品からデジタル技術(CG)がつかわれるようになりました。『リトルマーメイド』でディズニーは生まれかわったといってもよいでしょう。アニメとは原理的には、かさねられた紙をパラパラとめくることで絵がうごいてみえる「パラパラマンガ」でした。しかしデジタル技術をつかうことで世界がかわりました。"次元" があがりました。

『リトルマーメイド』のあとディズニーは、『美女と野獣』(1991)、『ライオン・キング』(1994)、『アナと雪の女王』(2013)など、世界的な大ヒットをつぎつぎにかさねていくことになるのです。アニメにとどまらず実写版の製作、ミュージカルの上演と、あらたな展開も大成功させます。ミュージカルでは、映像と物語と音楽がみごとな相乗効果を生みだしています。
 
ディズニー・ミュージカルは日本にももちこまれ、劇団四季が上演、ロングランをかさねており、『ライオン・キング』にいたっては実に18年間にわたって無期限ロングランがつづけられています。おどろくべきことです。

こうしてディズニーの歴史をみていると、何だか、ディズニーの一人勝ちのようにも感じられますが、世界の人々にこれだけ受けいれられるにはそれなりの理由があることもわかります。それはシンクロナイズと共鳴効果です。アニメ界初のトーキー映画『蒸気船ウィリー』が1928に公開されたとき、ディズニーは、映像と音声をシンクロナイズさせました。そして子供から大人まで家族みんなでたのしめる作品を創作しつづけ、家族のなかにも共鳴をうみだしました。シンクロナイズさせ共鳴させて "次元" をたかめてきのです。

なお約90年の歴史をみていると、初期の素朴な作品のほうが想像力をかきたてられます。現在の CG は、リアルで鮮明でうつくしくてすばらしいのですが、見えすぎてしまう、すべてを見せてしまう傾向があります。うっかりすると語りすぎてしまうのです。人間は、不完全なものに接したときのほうが想像力がはたらきます。創造性を刺激されます。このような意味でもおもしろい歴史展(?)でした。


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(平行法で立体視ができます)

 

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▼ 注
ディズニー・アート展 -いのちを吹き込む魔法-
特設サイト
※ 会場内は、グッズショップ以外は撮影禁止でした。