富山大学教授で脳科学者の井ノ口馨さんはつぎのようにのべています。

私は解決法がわからないような問題にぶつかったとき、まず徹底的に考え、それでもわからないときはいったんそこで打ち切って放っておきます。そうすると数日後、時には数か月後、リラックスしているときに良いアイデアを思いつきます。私の場合は、温泉の露天風呂に入っているときが多いです。睡眠もリラックスも、勉学や仕事にとって大事なんです。

前世紀までの日本には、寝ることはサボることという誤解がありました。また集中して頑張ることが美徳でした。リラックスするなんてとんでもない。また問題解決というと、むずかしいことをかんがえすぎていた人が多かったです。

しかし近年の脳科学や医学の研究により、睡眠とリラックスが記憶や発想・問題解決のために重要であることがあきらかになってきました。これからの時代は睡眠とリラックスが重要です。

ただし情報処理（インプット→プロセシング→アウトプット）の基本については認識しておいたほうがよいでしょう。睡眠をとったりリラックスするまえに内面への情報のインプットをしておく必要があります。インプットとは、本を読んだり現場を観察したり話を聞いたりすることです。インプットをしないで寝ていてもプロセシングはすすみません。

したがってインプットの努力を常日頃からするという条件つきで、インプットをしたらさっさと寝るのが一番ということになります。そして起きたらアウトプットをかならずするようにします。


▼ 参考文献
井ノ口馨著『記憶をあやつる』（角川選書）、角川学芸出版、2015年6年25日
｢記憶のメカニズムを分子や遺伝子から解き明かす」（井ノ口馨）milsil, 58号, 国立科学博物館, 2017年7月