たとえや類比をつかうとあたらしい物事を容易に理解できます。
最近、オーディオや音楽ダウンロードの世界で「ハイレゾ」という用語をよく耳にします。ハイレゾとは高解像度の意味であり、これまでの CD や通常の音楽ストリーミング配信よりもかなり高音質な音源のことです。ハイレゾは、音の情報量が CD の約6.5倍(192kHz/24bitの場合)もあるため、アーティストの息づかいやライブの臨場感が今まで以上に味わえるというわけです。

たとえばテレビのディスプレイでも、最近、高画質(高画素数化)がすすんでいます。オーディオでの「ハイファイからハイレゾへ」という流れは、映像での「ハイビジョンから4K、8Kへ」という発展に類比できます。

しかし問題点もあります。高解像であるために、あまりよくない録音ではノイズもひろってしまう(ノイズもきこえてしまう)、演奏家のちょっとしたこまかいミスまでのがさずに再生してしまうということがおこります。すべてがすぐれた録音であるわけではありません。録音の良し悪しがわかってしまうのです。

たとえば映像の世界でも、今までは見えなかったのに4Kや8Kになったために、出演者の顔のほくろや皺、厚化粧までが見えてしまうということがおこります。あるいは背景の粗がわかってしまうということがあります。

聞こえすぎるというのは見えすぎるようなことで、いいことばかりではありません。聞こえすぎる、見えすぎる。知りすぎたためにがっかりしたという経験は誰にでもあるものです。




音の世界を理解しようとするときに、映像にたとえてみるとこのように理解がふかまります。たとえることによって類比がはたらきます。

理解という現象は、すでに知っている類似なことをおもいうかべたときに生じます。すでに記憶している類似な情報にあらたな類似な情報がむすびついたときにわかったという気持ちが生じます。したがってたとえや類比がとても重要なのです。

類比は、記憶のためにも役立ちます。あるいは推理にも発展させることができます。類比と推理をあわせた方法が類推です。類推は発想法の基本でもあります。


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