分子レベルでの生物の研究が、生命進化のメカニズムをあきらかにしつつあります。
『ゲノム進化論』(Newton 別冊)は、生命の設計図である「ゲノム」の観点から生命進化のなぞを解説しています。



分子レベルで見れば、進化とは、「生命の設計図であるゲノムが、世代を経るにつれて書き換えられていくこと」である。

DNA 分子の中には、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の四つの「塩基(base)」とよばれる化合物が並んでいる。(中略)この ATGC こそ、ゲノムという生命の設計図に書かれた文字である。

ゲノムの解読は、ヒト以外にも多くの生物種で進んでおり、ゲノムのデータは爆発的に増加している。

こういった中、さまざまな生物種のゲノムを比較し、進化の謎に迫る研究が活発になってきた。

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進化論の研究は、以前は、化石と現生生物の観察によってすすめられてきましたが、近年では、分子レベルでの分析的研究がいちじるしくすすんでいます。

ヒトをふくむすべての生物は、細胞のひとつひとつのなかに DNA をもっています。DNA は、生命の成長や維持に必要なだけでなく、親から子へうけつがれる遺伝情報の実体です。

あらゆる生物には寿命があり、わたしたち人間も年をとると死ななければなりません。分子レベルの研究では、生物の進化において「性」が出現したときに「死」もそなわったと説明しています。「有性生殖で、おかしな遺伝子のくみあわせができてしまったときに、それを消去するしくみ(死のプログラム)をもった生物がいつかの時点であらわれた」というのです。

また細胞死と病気の関係についても研究がすすんでいるそうです。

たとえば、わたしたちの体のなかではがん細胞が日々発生していますが、普通は、「アポトーシス」といわれる自死によりがん細胞はなくなります。しかしアポトーシスをひきおこす能力がうしなわれた場合にはがんになってしまいます。またアルツハイマー病は、大脳の神経細胞の急激な自死によりひきおこされるとかんがえられています。

本書はやや難解ですが、最新の研究成果がまとめられており、性や死や病気について分子レベルで理解をふかめることができます。


▼ 参考文献
『ゲノム進化論』(Newton別冊)ニュートンプレス、2015年6月26日