170606 緩衝帯
図1 緩衝帯モデル
自然環境と居住地のあいだに緩衝帯をつくれば、自然環境が保全されるだけでなく、自然と人間が共鳴でき、人間は創造的になれます。
新宿御苑で「日本絶滅危惧植物」展が開催されていました(注1)。絶滅危惧種と絶滅種について認識をふかめ、またあらたな観点から植物をとらえなおすよい機会でした。

絶滅危惧種をへらし、生物の絶滅をくいとめようとおもったら、自然環境(生態系)の全体を保全しなければなりません。たとえばある野生動物を保護しようとおもったら、食べ物や住みか、土壌や地形もふくめて全体的に保全する必要があります。

地球上には、自然環境(野生の動植物の生息地)がある一方、人間の居住地があります。人間の居住地が肥大化したことにそもそも問題があるのですが、今回はそのことはおいておき、自然環境と居住地が共生するにはどうすればよいかについてかんがえてみたいとおもいます。居住地とは、集落であっても村であっても都市であってもかまいません。

ひとつの方法は自然保護区をつくり、人間の侵入を禁止するというやり方です。これは、人間がすんでいない地域、人口がすくない地域では有効です。

しかし現地住民が歴史的にくらしている地域ではどうでしょうか。住民にでていってもらうことはむずかしいことが多く、またこの方法は自然と人間を峻別してしまい、自然と人間のやりとりを否定することになりかねません。自然環境と人間の居住地を一線で区切ってしまうやり方は多くの地域で現実的ではありません。

そこでわたしは、緩衝帯モデル(図1)を提案したいとおもいます。

自然環境と居住地のあいだに緩衝帯をつくるのです。これは人間の手がはいった二次的自然、半自然といってもよく、日本でいえば里山がそれにあたります。そもそも里山からこのモデルのヒントをえました。日本の里山は緩衝帯のひとつのモデルです。

この方法をつかえば、自然環境を保全しながら、自然環境と人間が共生できます。物質・エネルギー・情報の流れもよくなります。ただし緩衝帯にたえず手をいれて、緩衝帯を維持・整備してかなければなりません。現地住民がそれを永遠におこなわなければなりません。

このシステムにおいては物質・エネルギー・情報の流れがおこり、自然環境と人間はたえずやりとりをおこないます。自然環境から居住地への流れはインプット、居住地から自然環境への流れはアウトプットです。居住地ではプロセシングがおこなわれます。

  • インプット :自然環境→緩衝帯→居住地
  • プロセシング:居住地
  • アウトプット:居住地→緩衝帯→自然環境

〈インプット→プロセシング→アウトプット〉に注目するのがポイントです。これを見落としている人がとても多いです。緩衝帯モデルは〈インプット→プロセシング→アウトプット〉システムといいかえてもよいです。この方法をつかえば、自然環境が保全できるだけでなく、自然環境と人間が共鳴でき、人間は創造的になれます(注2)。

たとえば植林活動をおこなう場合も、このようなモデルにもとづいておこなえば効果があがりやすいです。


▼ 注1

▼ 注2
共鳴できるとは、自然環境と人間の波長があいプロセシングがすすむということです。創造的になれるとは、よくできたアウトプットがだせるようになるということです。

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