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 ハナシノブ(ハナシノブ科)
(交差法で立体視ができます)
絶滅危惧および絶滅というあらたな観点から植物をとらえなし、環境を保全していかなければなりません。
新宿御苑で、「日本絶滅危惧植物」展がひらかれていました。希少な野生動植物種の保全についてまなぶことができました(注1)。写真は交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 - >>




ハナシノブ(ハナシノブ科)は阿蘇・九重地域のみに日本では生育し、青紫色のうつくしい花をつけます。園芸採取で減少しています。また似た外来種との交雑も懸念されています。



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 シマカコソウ(シソ科)
小笠原諸島に分布する多年生草本でう。白色の花を冬にさかせます。小笠原特有の希少植物であり絶滅の危機にあります。



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オリヅルスミレ(スミレ科)
日本の固有種です。冬〜春に白色の花をつけます。沖縄本島の渓流ぞいの崖に生育していましたが、新種とみとめられる前にダム建設により自生地が水没し、野生では絶滅しました。栽培品だけが現在はのこされています。



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リュウキュウベンケイ(ベンケイソウ科)
沖縄などで生育が報告されていましたが、開発などにより野生のものは現在では絶滅したとかんがえられています。岩礫地に生える多年草でした。


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絶滅のおそれのある種と野生絶滅種は、環境省により以下のように分類されランクづけされています。今回展示されていたおもな種とともにしめします。

  • 準絶滅危惧(現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種):マルヤマシュウカイドウ。
  • 絶滅危惧 II 類(絶滅の危険が増大している種):ヒメコウホネ、コバノミヤマノボタン、ツルラン、オガサワラシコウラン、ピレオギク。
  • 絶滅危惧 IB 類(IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの):ミセバヤ、ヒメイヨカズラ、ナリヤラン、トウサワトラノオ。
  • 絶滅危惧 IA 類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの):ハナシノブ、シマカコソウ。
  • 野生絶滅(飼育・栽培下あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種):オリヅルスミレ、リュウキュウベンケイ。

植物を、絶滅危惧および絶滅の観点から分類することは、学術的な従来の分類にはとらわれずに、あらたな観点から植物をとらえなおすことになります。あたらしい見方に慣れることが大事です(注2)。




生物の絶滅に関しては、植物だけでなく、動物にも絶滅危惧種が存在します。ちかい将来、動物園でしかみられなくなりそうな動物がたくさんいます。開発が近年いちじるしいアジアではとくに深刻な問題があります。

地球史においては、過去に5回の生物大絶滅がありました。そして現在、第6回目の大絶滅が進行中です。これは人間によってひきおこされています。人間ほど、地球上のいたるところに拡散した生物はいません。人間ははびこりすぎました。

生命は、多様性をうみだすようにそもそも進化してきました。したがって多様性をうしなわせるような働きは生命の原理からみてものぞましくありません。自然の原理にさからうことは結局は破滅へむかうことになります。

また自然環境と人間のあいだには物質・エネルギー・情報がながれています。人間は自然環境と、物質・エネルギー・情報をやりとりすることによって生命を維持しています。したがって自然環境を破壊することは生命の維持に影響してきます。環境がみだれ破壊されれば、人間のプロセシングもおのずとみだれエラーがおこります。このような観点からも環境を保全していくことが大事です。


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▼ 注1
日本絶滅危惧植物展 
自然環境・生物多様性(環境省)
レッドリストのカテゴリー(ランク)(環境省)

▼ 注2
あたらしい見方に慣れるということは、内面へのあたらしいインプット、あらたな観点からのインプットをするということであり、ここには、あらたなプロセシングがすすむ可能性、おもわな発想がうまれるチャンスがあります。