乾燥帯の耕作地では塩類集積による塩害がすすんでいます。問題の解決のためには、人間-文化-環境系の再構築が必要です。
紀元前2000年ごろに、西アジアに存在していたメソポタミア文明では、塩類集積によって食料の生産量がへったことが、文明の衰退につながったと考えられています(注1)。


塩類集積とは、耕作地に塩類がたまることであり、塩類がたまると農作物がそだたなくなります。乾燥帯のおおくの地域では、ひいてきた水を畑にながす灌漑農業をおこなっています。灌漑用水や地下水や土壌に塩類がたくさんふくまれていると、水が蒸発したあとに塩類がのこって地表にたまり塩害をひきおこします。乾燥帯では水が蒸発しやすいことから塩類集積がおこりやすく、おおくの地域で問題になっています。

この塩類集積は現代になってはじまったことではなく、紀元前2000年前にもあり、メソポタミア文明衰退のおおきな原因になったというのです。

乾燥帯の人々は今も昔も、灌漑設備と耕作地を開発し、そして自然環境から恩恵をうけとりながら生活してきました。しかし開発(アウトプット)と摂取(インプット)が大きくなりすぎて人間と環境のバランスがくずれてしまいました。

この問題は、ただ単に塩類を除去すれば解決するというわけではなく、人間-文化-環境系というシステム全体の再構築が必要です。環境問題は、環境だけを改善すれば解決されるというものではなく、人間も変わらなければなりません。〈インプット→プロセシング→アウトプット〉のやり方を改善しなければなりません。

乾燥帯とはかぎらず、近年、開発途上地域の開発がいちじるしいです。開発につぐ開発によりシステムの崩壊がどこでもすすんでいます。わたしたちは現代人は、メソポタミア文明の滅亡からまなばなければなりません。


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モデルをつかって気候帯をとらえる - 乾燥帯(『気候帯でみる! 自然環境〈2〉』)-

▼ 注1
こどもくらぶ著・高橋日出男監修『気候帯でみる! 自然環境〈2〉乾燥帯』少年写真新聞社、2012年12月22日