乾燥地域では、乾燥地域独特の文化がはぐくまれました。自然環境(乾燥気候)とそこでくらす人々とを一体のものとしてとらえ、両者の相互作用(インプット→プロセシング→アウトプット)に注目することが大事です。
『気候帯でみる! 自然環境〈2〉乾燥帯』(少年写真新聞社)は、ケッペンが区分した気候帯のなかの乾燥帯について説明しています。
乾燥帯は、「樹木が育たないほど乾燥したところ」であり、降水量によってつぎの2つにわけられます。
■ 気象災害
乾燥帯の気象災害にはつぎのようなものがあります。
■ 植物
乾燥帯の植物にはつぎのようなものがあります。見慣れぬ変わった植物がおもしろいです。
■ 動物
乾燥帯の動物にはつぎのようなものがいます。
■ 農業
乾燥帯の農業にはつぎのようなものがあります。
■ 牧畜
伝統産業としてはステップ気候の遊牧があります。遊牧されているおもな家畜は、ヒツジ・ウマ・ラクダ・ヤギなどです。遊牧をおこなう人々は遊牧民とよばれ、家畜から、乳・乳製品・肉・毛・毛皮などをえて、手にはいらない食料や生活用品と移動先で交換するなどして生活をなりたたせてきました。
■ 人々のくらし
サウジアラビア・リヤド(砂漠気候):サウジアラビアの首都・リヤドは典型的な砂漠気候地帯に属します。人々の服装は全身をおおうのが特徴的です。そもそもは直射日光をさえぎり、砂嵐のときにも顔を保護するためです。女性は外出時には、黒いマントのような「アバヤ」で体を、「ヘジャブ」や「ニカブ」とよばれる布で頭部をおおいます。男性は、「トーブ」とよばれる白いワンピースがよく着られます。頭にはまるい帽子をかぶり、その上にスカーフをかけて、黒い縄上の輪でおさえます。
食事は、「デーツ」(ナツメヤシの実)が貴重な栄養源です。ヒツジやヤギの乳からつくられた「ラバン」というヨーグルトドリンクと一緒にたべられることがよくあります。
ペルー・リマ(砂漠気候):ペルーの首都・リマは砂漠気候といっても、アンデス山脈のふもとの太平洋岸に位置するため、魚介類がよく食べられています。魚介類をレモン汁につけて、タマネギやトマトなどとあえた「セビチェ」とよばれる料理がよくたべられています。
モンゴル(ステップ気候):モンゴル人は歴史的には遊牧民です。伝統的なすまいは「ゲル」(中国語ではパオ)とよばれる組み立て式のテントです。しかし最近では、首都ウランバートルに定住する人々が増えてきています。
遊牧民は頻繁に移動するため、荷物となる調理器具もかぎられたものしかもっていませんでした。食材も、家畜からとれる乳でつくった乳製品や、家畜の肉など、ごくかぎられたものです。家畜を食べるときには血や内臓も無駄にせず、のこさず利用します。ビタミンやミネラルもヒツジからとります。
アメリカ・サンディエゴ(ステップ気候):アメリカ・カリフォルニア州に位置するサンディエゴは1年を通じて温暖な気候で、アメリカでもとくに気候がよく、すごしやすいことで有名です。雨季は12〜3月で、わずかに雨がふりますが、それ以外の時期は乾季になります。
このように、乾燥地域でくらす人々は、乾燥した独特の自然環境のなかで、環境に適応し、環境を活用して生きてきました。具体的には、農耕・牧畜・住居・衣服・料理・工芸などを工夫し、独自の生活様式をつくりあげました。このような生活様式は総称して文化とよんでもよいでしょう。乾燥地帯には、乾燥地帯特有の文化がはぐくまれたのです。
このような文化は、乾燥気候という自然環境とそこでくらす人々との相互作用によって成長しました。人々は、自然環境から、物質・エネルギー・情報をとりいれ(インプットし)、一方で、物質・エネルギー・情報を環境へアウトプットしています。乾燥地域のなかにあって人々は基本的に、プロセシングをする存在です。こうして乾燥地域というひとつの体系(システム)ができあがってきたのです(図1)。
人々と自然環境を一体のものとして体系的にとらえ、〈インプット→プロセシング→アウトプット〉に注目することが大事です。人々は何をとりいれ、どのように処理し、何をアウトプットしているのか? このような見方をすることは、たとえば日本列島と日本人のシステムをかんがえるときにも役立ちます。
▼ 関連記事
▼ 引用文献
こどもくらぶ著・高橋日出男監修『気候帯でみる! 自然環境〈2〉乾燥帯』少年写真新聞社、2012年12月22日
乾燥帯は、「樹木が育たないほど乾燥したところ」であり、降水量によってつぎの2つにわけられます。
- 砂漠気候:1年を通じて、雨はほとんどふりません。
- ステップ気候:みじかい雨期があるものの、乾季がながく、年間の降水量はそれほど多くありません。ステップとはロシア語で草原を意味する言葉です。
■ 気象災害
乾燥帯の気象災害にはつぎのようなものがあります。
- 砂嵐(砂塵嵐):風でまきあげられた砂によって、1km 先までがみえない状態をいいます。農作物の被害がおこったり、人間の皮膚を傷つけたり、砂をすいこんで肺をいためることなどがあります。
- 熱波:水不足、農作物の被害、熱中症などがおこります。
- 干ばつ:農作物の被害が生じ、多くの人々が飢餓状態になります。
■ 植物
乾燥帯の植物にはつぎのようなものがあります。見慣れぬ変わった植物がおもしろいです。
- 砂漠気候の植物:サボテン、チランジア、アデニウム、ガラ・デ・レオン、ウェルウィッチア。
- ステップ気候の植物:イネ科の植物、マメ科の植物。
■ 動物
乾燥帯の動物にはつぎのようなものがいます。
- 砂漠気候の動物:ラクダ、フェネック、トビネズミ、シロオリックス。
- ステップ気候の動物:モウコノウマ、アフリカノロバ、ミズタメガエル、モロクトカゲ、オブトサソリ。
■ 農業
乾燥帯の農業にはつぎのようなものがあります。
- オアシス農業:地下水や川などの水を利用する灌漑によって農業をおこなわれ、貴重な水を大切につかう工夫がみられます。よく栽培されるのはナツメヤシです。ナツメヤシの下に、コムギ、オオムギ、ソルガム(モロコシ)、マメ、ウリなどの畑をつくります。
- 天水農業:雨季にふるわずから雨水(天水)にたよる農業です。土地がゆたかでないため、休耕や混作もおこなわれています。
- 企業的農業:たとえば北アメリカ中西部の「グレートプレーンズ」では機械をつかった大規模農業がおこなわれ、「世界の穀倉地帯」とよばれています。コムギ、トウモロコシ、ダイズなどが栽培され、放牧もおこなわれています。
■ 牧畜
伝統産業としてはステップ気候の遊牧があります。遊牧されているおもな家畜は、ヒツジ・ウマ・ラクダ・ヤギなどです。遊牧をおこなう人々は遊牧民とよばれ、家畜から、乳・乳製品・肉・毛・毛皮などをえて、手にはいらない食料や生活用品と移動先で交換するなどして生活をなりたたせてきました。
■ 人々のくらし
サウジアラビア・リヤド(砂漠気候):サウジアラビアの首都・リヤドは典型的な砂漠気候地帯に属します。人々の服装は全身をおおうのが特徴的です。そもそもは直射日光をさえぎり、砂嵐のときにも顔を保護するためです。女性は外出時には、黒いマントのような「アバヤ」で体を、「ヘジャブ」や「ニカブ」とよばれる布で頭部をおおいます。男性は、「トーブ」とよばれる白いワンピースがよく着られます。頭にはまるい帽子をかぶり、その上にスカーフをかけて、黒い縄上の輪でおさえます。
食事は、「デーツ」(ナツメヤシの実)が貴重な栄養源です。ヒツジやヤギの乳からつくられた「ラバン」というヨーグルトドリンクと一緒にたべられることがよくあります。
ペルー・リマ(砂漠気候):ペルーの首都・リマは砂漠気候といっても、アンデス山脈のふもとの太平洋岸に位置するため、魚介類がよく食べられています。魚介類をレモン汁につけて、タマネギやトマトなどとあえた「セビチェ」とよばれる料理がよくたべられています。
モンゴル(ステップ気候):モンゴル人は歴史的には遊牧民です。伝統的なすまいは「ゲル」(中国語ではパオ)とよばれる組み立て式のテントです。しかし最近では、首都ウランバートルに定住する人々が増えてきています。
遊牧民は頻繁に移動するため、荷物となる調理器具もかぎられたものしかもっていませんでした。食材も、家畜からとれる乳でつくった乳製品や、家畜の肉など、ごくかぎられたものです。家畜を食べるときには血や内臓も無駄にせず、のこさず利用します。ビタミンやミネラルもヒツジからとります。
アメリカ・サンディエゴ(ステップ気候):アメリカ・カリフォルニア州に位置するサンディエゴは1年を通じて温暖な気候で、アメリカでもとくに気候がよく、すごしやすいことで有名です。雨季は12〜3月で、わずかに雨がふりますが、それ以外の時期は乾季になります。
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このように、乾燥地域でくらす人々は、乾燥した独特の自然環境のなかで、環境に適応し、環境を活用して生きてきました。具体的には、農耕・牧畜・住居・衣服・料理・工芸などを工夫し、独自の生活様式をつくりあげました。このような生活様式は総称して文化とよんでもよいでしょう。乾燥地帯には、乾燥地帯特有の文化がはぐくまれたのです。
このような文化は、乾燥気候という自然環境とそこでくらす人々との相互作用によって成長しました。人々は、自然環境から、物質・エネルギー・情報をとりいれ(インプットし)、一方で、物質・エネルギー・情報を環境へアウトプットしています。乾燥地域のなかにあって人々は基本的に、プロセシングをする存在です。こうして乾燥地域というひとつの体系(システム)ができあがってきたのです(図1)。
図1 乾燥地域のシステム
人々と自然環境を一体のものとして体系的にとらえ、〈インプット→プロセシング→アウトプット〉に注目することが大事です。人々は何をとりいれ、どのように処理し、何をアウトプットしているのか? このような見方をすることは、たとえば日本列島と日本人のシステムをかんがえるときにも役立ちます。
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▼ 引用文献
こどもくらぶ著・高橋日出男監修『気候帯でみる! 自然環境〈2〉乾燥帯』少年写真新聞社、2012年12月22日