地球と生物について理解をふかめようとおもったら、歴史的時間的な視点と構造的空間的な視点の二つの視点から情報を整理するとよいです。二つの視点による情報整理は文明や国や地域などを探究するときにも有用です。
荒舩良孝著『地球の謎』(宝島社)は、地球と生物の一般的むけビジュアル入門書です。地球と生物の構成と歴史について簡潔にまとめられていてわかりやすいです。




地球と生命について理解するとき、歴史的時間的な見方と構造的空間的な見方の二通りの見方があります。本書では、序章と第4章では歴史的時間的な見方、第1章〜第3章では構造的空間的な見方を紹介しています。


歴史的時間的な見方
 序 章 地球の誕生から今日まで
 第4章 38億年の生命の神秘をひもとく

構造的空間的な見方
 第1章 地球の「大陸」を知る
 第2章 地球の「海洋」を知る
 第3章 地球の「気象」を知る




歴史的時間的な見方では、序章の2〜5ページに地球史年表がでており、これがいちばん役立ちます。本書では 23 の地球史イベントをとりあげ、年表をみながら、それぞれの解説ページにとべるような仕組みになっています。主要なイベントはつぎのとおりです。


46億年前 太陽系と地球の誕生 →6ページ
40〜44億年前 海の誕生 →19ページ、29ページ
40〜38億年前 生命の誕生 →56ページ
5億4200万年前 カンブリア大爆発 →60ページ
3億8500万年前〜3億5900万年前 脊椎動物の上陸 →62ページ
700万年前 人類の出現 →62ページ


これらのなかでとりわけ重要なのが「カンブリア大爆発」です。比較的短期間に、生物の種が一気に多様化し、地球上に現在存在するすべての動物の直接的な祖先が誕生しました。




一方、構造的空間的に地球をみると、大陸と海洋と大気から地球は構成されていることがわかります。

大陸は安定しておらず、大陸移動・造山運動・地震・火山噴火などの地殻変動をおこしています。これがやっかいであり、とくに日本列島のような変動帯では、大地震や火山噴火などの自然災害がくりかえしおそってきます。これらの予知はできず、不意打ちでおそってきますので、常日頃からそなえておく必要があります。

海洋は、つかみどころがないといった感じがしますが、海流に注目することが大事です。日本近海には、黒潮と親潮がながれています。地球全体をみわたすと、このような海流がいくつもあり、海流がつらなって大きな円ができています。そして海流は、世界各地の気候に大きな影響をあたえています。また深海は、地球最後のフロンティアとして注目されています。奇異な生物と不思議な生態系、鉱物資源などが確認されていますがくわしいことはわかっていません。

大気は、わたしたちにとっては気象現象がおこるところです。日本列島には台風が毎年やってきて甚大な水害をもたらすことがしばしばあります。また近年注目されているのが竜巻です。短時間で大きな被害をもたらすので観測が強化されています。積乱雲が発生すると上昇気流がおこり、地上付近の大気の回転運動がひきのばされて回転半径が小さくなっていくことで竜巻が発生します。




本書の最終章(第4章)「38億年の生命の神秘をひもとく」では生物と地球の進化について解説しています。

27億年前〜21億年前あたりにシアノバクテリアが出現しました。シアノバクテリアは光合成によって酸素を発生させる細菌です。これにより、地球上にはそれまでほとんど存在しなかった酸素が大量につくられるようになりました。これを「大酸化事変」といい、地球の環境は大きく変化することになりました。酸素は、当時のほかの生物にとっては毒でした。酸素は、周囲の物質とはげしく反応しやすい性質があり細胞を傷つけやすいためです。

しかしその後(21億年前ごろ)、酸素に適応できる真核生物(注)が誕生しました。真核生物(の仲間)には、酸素をつかって糖を分解するミトコンドリアという小器官を細胞内にもっています。

このように生物は、環境に一方的に支配されてきたのではなく、環境の改変もおこなっており、生物と環境は、おたがいに影響をあたえながら進化したきたといえます。この相互作用に気がつくことは非常に重要なことです。人間をふくむ生物は、環境から作用をうける一方で環境に作用をあたえています。環境から作用をうけることをインプット、環境に作用をあたえることをアウトプットといってもよいです(図)。「環境に支配されている」と一方的に決めつけるのはまちがいです。

170518 生物
図 生物と環境の相互作用


▼ 注
生物は、原核生物と真核生物に二大分類され、原核生物は真正細菌と古細菌に分類されます。真正細菌はバクテリアともよばれる単細胞生物で、たとえば納豆菌などです。古細菌は真正細菌からわかれた単細胞生物で、アーキアともよばれます。真核生物は古細菌から進化したとかんがえられ、単細胞のものだけでなく多細胞生物もいます。カビ、植物、動物などです。

170518 生物の分類

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▼ 参考文献
荒舩良孝著『地球の謎』(知恵袋BOOKS)宝島社、2017年5月6日