考古学的な研究によって先住民の歴史を知ることができます。環境の変動と環境への適応についておしえられます。
『ナショナルジオグラフィック 2017.4号』では、「アラスカ先住民 解け出した氷の下の歴史」について特集しています。米国アラスカ州の南西岸に位置するヌナレクでは、先住民ユピックの祖先がのこした貴重な遺物が発掘されています。
これまでに2500点以上の遺物がほりだされてきました。1660年頃から凍土に埋もれていたため、おどろくほどどれも保存状態がいいという事情があります。食器などの日用品もあれば、儀式につかわれた木製の仮面、セイウチの牙でできた入れ墨用の針、カリブーの歯をつらねたベルトなどのめずしい物がたくさんあります。
先住民ユピックは、「この村では太っていることはいいことなんです。ちゃんと食べている証拠ですから」といいます。
▼ 注
アラスカ州は、8割以上が永久凍土におおわれています。ただし北部のブルックス山脈では凍った土・岩・水の層が地下約600メートルにまで達しますが、南下するにしたがってあさくなります。
温室効果ガスの排出が現在のペースで2100年までつづけば、全世界の地表付近の永久凍土は5割以上が焼失すると予測されています。地中の二酸化炭素やメタンの放出が温暖化に拍車をかけ、地下水の流出や植物による蒸散で地盤は沈下します。
▼ 引用文献
『ナショナルジオグラフィック 2017.4号』日経ナショナルジオグラフィック社、2017年3月30日
英国のアバディーン大学に籍を置き、調査隊を率いる考古学者のリック・クネヒトは、この地で起きた惨劇と、先住民のユピックの人々が伝える昔話との間には関連があるとみている。ユピックの人々は、歴史家が「弓矢の戦争」と呼ぶ時代の記憶を語り継いできた。ロシアの探検家が1700年代にアラスカに到達する以前、ユピックの共同体の間では血みどろの戦いが繰り広げられていたという。ヌナレクの遺跡は、数世代にわたるこの凄惨な時代の考古学的証拠と確たる年代を、初めて明らかにした。
これまでに2500点以上の遺物がほりだされてきました。1660年頃から凍土に埋もれていたため、おどろくほどどれも保存状態がいいという事情があります。食器などの日用品もあれば、儀式につかわれた木製の仮面、セイウチの牙でできた入れ墨用の針、カリブーの歯をつらねたベルトなどのめずしい物がたくさんあります。
先住民のユピック族は狩猟採集の生活をおくっていました。発掘がすすむにつれて自分たちのルーツについて関心をもつ人々が増えてました。将来は資料館をつくるのが夢です。考古学には、過去に対する評価を高める潜在的な力もあります。
研究がすすむにつれて、この地でくりひろげられた戦いは気候変動の結果によるものだったということもわかってきました。気候が急激に変化するときには、食料が手に入る時期が大幅にずれることがよくあります。小氷期や現代のように、極端な気候の変動がおきると、環境への人々の適応がおいつかなくなることがあります。考古学的な研究は、環境の変動と環境への適応についてもおしえてくれます。
今日、地球温暖化が急激にすすみ、世界各地の凍土が溶けはじめ、ここヌナレクでも被害がではじめています(注)。
今日、地球温暖化が急激にすすみ、世界各地の凍土が溶けはじめ、ここヌナレクでも被害がではじめています(注)。
先住民ユピックは、「この村では太っていることはいいことなんです。ちゃんと食べている証拠ですから」といいます。
▼ 注
アラスカ州は、8割以上が永久凍土におおわれています。ただし北部のブルックス山脈では凍った土・岩・水の層が地下約600メートルにまで達しますが、南下するにしたがってあさくなります。
温室効果ガスの排出が現在のペースで2100年までつづけば、全世界の地表付近の永久凍土は5割以上が焼失すると予測されています。地中の二酸化炭素やメタンの放出が温暖化に拍車をかけ、地下水の流出や植物による蒸散で地盤は沈下します。
▼ 引用文献
『ナショナルジオグラフィック 2017.4号』日経ナショナルジオグラフィック社、2017年3月30日