日本文化の特徴は「凹型」性にあります。日本人のインプット能力を今後ともいかしていくことが大事です。
哲学者の上山春平さんは、自著『哲学の旅から』(朝日選書)のなかで日本文化の「凹型」性についてのべています(注)。
日本という国は、人類文明の谷底のようなところで、あらゆる文明がここに流れこんでくるが、ここからなにか独自な文明がよそに流れだしたということをきかない。
すなわち日本文化の最大の特徴は、ユーラシア大陸の諸文明を純粋にうけいれてきた受容の文化であり、それは「凹型」であるということです。
たしかにそのとおりで、日本人は、ふるくはインドや中国の、近代では西欧からの外来文明を実によく吸収してきました。その一方で、自分の意見をいわない民族だともいわれます。
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このことを、今日の情報社会の観点からとらえなおすとどういうことになるでしょうか?
受容ができるとは、情報のインプットがよくできるということです。これは非常に重要な能力です。
世の中には、自己主張つまりアウトプットばかりしている人がいます。とくにプライドが高くなってしまったお年寄りがそうです。過去の記憶や遺産にたよって、そこからのみアウトプットし、あらたなインプットができません。
それに対して、インプットがどんどんできるということは、それにひきつづくプロセシングそしてアウトプットの可能性が大きくひらけているということになります。「日本人は受け身である」ということを否定的にとらえる人がいますが、情報処理の観点からみると受け身はいいことです。あとはプロセシングとアウトプットの訓練をしていけばよいのです。
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上山春平さんは、「日本の外来文明吸収のすさまじさは、日本の基層文化である縄文文化にもとづく」という仮説を提案しています。縄文時代に日本人は、かなり高度な狩猟採集文化を発達させたことが知られています。あるいは日本には照葉樹林がひろく分布し、「照葉樹林文化」がはぐくまれたとかんがえられています。その文化の核には自然性があります。
この自然性を核にして、外来文明を受容し、そしてそれを消化し(プロセシングをすすめ)、日本の自然にあわせて改善しながら日本文化を発展させてきたのではないでしょうか。ただインプットしてそれでおわりということではありませんでした。
このような論点は、今後の日本の発展をかんがえるうえでも重要だとおもいます。
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▼ 注:参考文献