日本の基層文化である縄文文化に注目することによって、自然と人間が共生するためのヒントがえられます。
哲学者の上山春平さんは、自著『哲学の旅から』(朝日選書)のなかで、日本の基層文化である縄文文化についてのべています(注)。
稲作文化というものは、今から二千年余り前に、大陸から渡来した外来文化であって、日本の風土から自生した本来の原始文化ではない。日本の原始文化は、今から一万年余り前にまでさかのぼり、四、五千年前にクライマックスに達する縄文文化に求めねばなるまい。
このように縄文文化は日本の原始文化であり、日本の基層文化であるとかんがえられます。
縄文文化は、すぐれた土器をもつ文化として知られ、土器文化は定住と不可分なものです。実際、縄文時代の遺跡から、定住の証拠となる住居跡がたくさん発掘されています。
これらのことから、「縄文時代の狩猟採集文化が定住生活を可能にするほど豊かなものであった」という仮説を上山さんはたてています。
縄文人は、ゆたかな自然環境から恩恵をうけながら、それをたくみに利用し、独自の狩猟採集文化をはぐくみました。このような文化は、縄文人と自然環境のやりとりによって成長したのであり、縄文人・文化・自然環境がひとつの調和的な体系(システム)をつくっていたとイメージすることができます(図1、注1)。これは、西欧流に人間が自然を支配しようとするやり方ではなく、人間と自然が共生するモデルでもあります。
縄文人は、ゆたかな自然環境から恩恵をうけながら、それをたくみに利用し、独自の狩猟採集文化をはぐくみました。このような文化は、縄文人と自然環境のやりとりによって成長したのであり、縄文人・文化・自然環境がひとつの調和的な体系(システム)をつくっていたとイメージすることができます(図1、注1)。これは、西欧流に人間が自然を支配しようとするやり方ではなく、人間と自然が共生するモデルでもあります。
図1 縄文人・狩猟採集文化・自然環境の体系
縄文文化を探究するうえで欠かせないのが日本にひろく分布する照葉樹林です。これは、シイ・カシ・クスなどのピカピカ光る濃緑色のかたい葉をもつ常緑樹を主力とする森林です。縄文文化には、この照葉樹林ではぐくまれた「照葉樹林文化」という側面ももっています。
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このような上山さんの方法をみていると、諸学の統合をしようとしているのだということがわかります。諸学の統合は、現代における哲学者の大きな役割になってきています。
しかし学問にかぎらず何かを探究するときの方法は西欧流の分析が主流になっているとおもいます。分けることは分かることであるとかんがえ、どこまでもこまかく物事を分解していきます。ところが、あまりにもこまかく分けすぎて、全体像がまったくわからなくなってきています。タコツボ化がすすみ、縦割り社会や分断の時代になっています。
こうしたなかで、諸学の統合や多様な情報の統合が大きな課題になってきていると感じます。情報の統合は、自分でやってみることも大切ですが、上山さんの研究のようなよくできた実践事例を参考にし、また活用させていただくことも大事でしょう。
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▼ 注1
文化には、人間と自然環境を媒介するという性質が基本的にあります。
▼ 注:参考文献