地球環境問題を解決するためには、人口抑制と環境保全をセットにしてとりくまなければなりません。環境の改善とともにわたしたち人類もかわらなければなりません。そうでないといずれ破滅します。
二宮洸三著『気象と地球の環境科学(改訂3版)』は大学教養課程レベルの地球環境学の教科書です。著者が気象学者であることから大気と海洋に関する解説がとくにすぐれているのが特色です。



1章 地球環境と地球システム
2章 地球環境の成り立ち
3章 大気と水循環
4章 海洋と海水
5章 生物系と地球環境
6章 気候と気候変動
7章 人類と地球環境
8章 大気の汚染
9章 酸性雨と環境問題
10章 オゾン層とオゾン破壊
11章 地球温暖化問題
12章 海水と水の環境問題
13章 砂漠化と森林破壊
14章 災害と社会
15章 エネルギー問題と地球環境
16章 地球環境保全の取組み

180621 人口増加


本書の中核となるのは、5章「生物系と地球環境」、6章「気候と気候変動」、7章「人類と地球環境」であり、これらの前の章はこれらを理解するための前提となる説明、これらのあとの章は地球環境問題の各論になっています。

中核部分をモデル化(図式化)すると下図のようになります。

180621 人類
図 〈人類-自然環境〉システム


自然環境とは生物(動物・植物など)や気候などのことです。このようなモデルは〈人類-自然環境〉システムとよぶことができます。

人類(人間)の世界総人口は、農耕社会がはじまった紀元前 8000 年ごろは 2000〜3000 万人であったと推定されています。その後しばらくのあいだはきわめてゆるやかな人口増加がつづきましたが、1650 年になると約5億人に、1800 年には 10 億人に達しました。そして 1920 年には 20 億人に、1975 年には 40 億人に、2000 年には 60 億人に、2011 年には 70 億人に達しました。すなわち産業革命以後、近代化とともに爆発的に人口が増加しました。

また世界のエネルギー消費総量は、1860 年の1億 t が、1910 年には 10 億 t 、2000 年には約 100 億 t に、2007 年には 117 億 t に達しています。すさまじい増大です。

さらに近代の機械文明は、たくさんの人工物質を生産してきました。これらは、自然環境に廃棄されるだけで分解されることはなく、自然環境のみならず人体をも汚染しています。

このように、人類の人口増加と活動の拡大は自然環境に悪影響をおよぼし、食糧不足やエネルギー不足・格差社会などとともに地球環境問題をひきおこしています。

地球が有限であり、永久機関ではないことは科学が証明しています。人類は、自然法則をこえることはできません。もうすぐ限界につきあたることはあきらかです。そのときには非常に大きな惨害が世界各地で発生します。

したがって人口抑制と環境保全をセットにして、人類の最重要課題としてとりくまなければなりません。

とくに人口増加がいちじるしい“開発途上国”において人口抑制をすすめなければなりません。先進各国の政府開発援助などで「家族計画」プロジェクトなどと称していくらかやっていますが、最重要課題にどうしてしないのか。認識があまいです。

このように、地球環境問題を解決しようとおもったら自然環境の保全・改善だけでなく、わたしたち人類も改善しなければなりません。人類(主体)はそのままで環境だけをいじっていても問題は解決しません。




最近の用語でいうと地球は「複雑系」です。物理学的・数学的な計算だけでは理解できないシステムです。〈人間-自然環境〉系というシステムを認識し、推理法をつかって仮説をたて、科学的技術(分析的技術)をつかって検証するという方法が必要です。

地球環境学は、広範囲な分野におよぶため、各論におちいりやすいです。しかし本書でも強調しているように地球はひとつのシステムであり、全体の調和をめざさなければうまくいきません。一ヵ所だけをつっついるとほかがダメになります。

たとえば絶滅危惧種の特定の動物だけを保護しようとしてもうまくいかず、えさとなる植物、それらがそだつ土壌・地形・地質など、生態系全体を保全しなければなりません。さらに保護区域と緩衝地帯の設定など、総合的にとりくまざるをえません。目先の現象にとらわれていてはいけません。


▼ 参考文献
二宮洸三著『気象と地球の環境科学(改訂3版)』 オーム社、2012年7月20日

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