取材をしたり発見をしたらファイル(情報のひとまとまり)をつくります。そしてそのファイルをアウトプットします。ブログをつかうと便利です。
小長谷有紀著『ウメサオタダオと出あう 文明学者・梅棹忠夫入門』(小学館)は、国立民族学博物館で開催された「ウメサオタダオ」展で、どのように来場者が彼と出会ったかを、京大型カード(はっけんカード)をつかって記録し整理した本です(注1)。




京大型カードというのは、B6 サイズ(たて128mm X よこ183mm)で、画用紙くらいの厚みがあり、ブルーの罫線がひいてあるカードです。本展ではこれを「はっけんカード」と命名し、来館者は、おもいおもいにこのカードに感想などを記入しました。本書では、150枚のカードが紹介され、また264人の記載内容が本文内でとりあげられています。


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京大型カードの例(19ページから引用)


京大型カードは、梅棹忠夫著『知的生産の技術』(岩波新書)でそもそも紹介されたカードです(注2)。

取材したり発見したことなどをを一枚一項目で記入していきます。カードが蓄積されたら、課題に応じて必要なカードをピックアップしたり、さまざまなカードをくみあわせたりくみかえたり、あるいはあたらしいカードを挿入し不要なカードを削除したりしながら「知的生産」をすすめます。

これが、普通のノートにもし記入されていたら、情報を自在にくみかえることができません。カードをつかう利点はここにありました。これにより、常識にはとらわれない自由な発想がうまれます。

カードをつくるときの注意点は一枚一項目にすることです。カードは、情報のひとまとまりになっていなければなりません。情報を単位化するということです。情報のひとまとまりとは現代の情報用語をつかえばファイルということです。




今日では、コンピューター(デバイス)が発達したので紙のカードはつかいません。京大型カードのかわりにコンピューターをつかってファイルをつくり、ストレージやクラウドにファイルしていきます。コンピューターをつかう場合であっても、情報のひとまとまりをつくることの重要性はおなじです。

あるいはブログをつかっても同様なことができます。ブログの一記事が一枚のカードに相当します。一記事一項目でなければなりません。ブログは機能が充実しているので、独自のカテゴリーとタグを設定して分類・検索したり、キーワードで全文検索したりして必要な記事を瞬時にピックアップできます。日付で検索することもできます。時系列で記事が登録されていくので人生の記録にもなります。無料ブログではライブドアブログがおすすめです(注3)。




梅棹忠夫さんが『知的生産の技術』で提唱した「知的生産」とは、今日的にいうと知的アウトプットということです。知的な情報をアウトプットすることが重要であり、そのためには情報のインプットとプロセシングが前段階として必要です。

『知的生産の技術』が執筆された当時はコンピューターがまだ発達していなかったので、紙の道具をつかった技術が紹介されていますが、今日では、デバイスとインターネットをつかうようりに変わりました。

しかし情報のひとまとまり(ファイル)をつくり、知的なアウトプットをしていくという「知的生産」の本質は何ら変わりません。形にとらわれないで本質を理解することが大事です。

たとえばブログをつかえば、ファイルづくりとアウトプットが同時にできてとても便利です。情報技術が進歩したお陰で、努力すれば知的生産が誰でもできる時代になりました。


▼ 注1
巻末に、「梅棹忠夫のおもな著作」と「梅棹忠夫略年譜」が掲載されているので、梅棹忠夫を今後よんでいこうとする人のために役立ちます。

▼ 注2
「知的生産の技術」がさらに発展したのが「KJ法」です。

▼ 注3
Facebook でも、ファイルづくりとファイルのアウトプットはできます。ただし SNS なので、ファイルのその後の活用のためには機能が充実していてブログの方が便利です。また Twitter は、字数制限があるのでブログのようにはいきませんがメモの手段としてつかえます。メモとアウトプットが同時にできて便利です。 

▼ 参考文献
小長谷有紀著『ウメサオタダオと出あう 文明学者・梅棹忠夫入門』小学館、2011年12月17日
梅棹忠夫著『知的生産の技術』(岩波新書)岩波書店、1969年7月21日