生存戦略の視点から植物をみなおしてみると、したたかに生きる植物のちがった側面を知ることができます。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton 2017.2』の Topic では、「植物に秘められた巧妙な生存戦略」について写真をつかって解説しています。「したたかに生きる、物言わぬ戦略家」 という植物のちがった側面をみることができます。




具体的にはつぎのような生存戦略があります。


  • するどいトゲで、動物を寄せつけない
  • 毒や苦味で、動物・昆虫を排除する
  • 蜜を餌にして、アリをたくみに飼いならす
  • 天敵の天敵を呼び寄せる
  • 二重三重の防御壁で、病原菌を排除する
  • 周囲の植物と太陽光や栄養を奪い合う熾烈な戦い
  • ライバルの少ない乾燥地で繁殖する
  • たくみに虫を捕らえ、栄養に
  • 植物を利用する人類、人類を利用する植物

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植物を食べるのは草食動物と昆虫の幼虫などです。植物は、これらの動物に食べられないようにするためにするどいトゲで防御したり、食べると苦味が感じられるような成分をもっています。毒をもつ植物も多いです。しかし動物を殺してしまうほどつよい毒をもつ植物は少ないです。動物たちに、「この植物は食べてはいけない」という学習をさせるようにしているからだそうです。

一方、アリという "用心棒” を飼いならして身をまもる植物もいます。あるいは天敵の天敵、たとえばアオムシの天敵であるコマユバチをひきよせて身をまもる植物もいます。ほかの動物と共生しながら生きている例といえるでしょう。

あるいはライバルのすくない乾燥地で繁殖するサボテンなどもいます。競争のすくない空白地帯に進出した例です。

またとても興味ぶかい植物として「食虫植物」がいます。虫をつかまえて栄養源にしてしまいます。たとえばウツボカズラは「落とし穴」で虫をつかまえます。モウセンゴケの葉には、虫をつかまえるための粘液がついた腺毛がびっしりと生えています。ハエトリソウの葉は二枚貝のような形をしており、虫がくるとあっという間に葉を閉じます。食虫植物はおそろしい植物のようにみえますが、成長に必要な窒素などが極端に不足するような、非常にきびしい環境のなかで必死に生きぬくために独自の進化をしてきたのです。



 

植物は通常は、形態や生息環境によって認知することが多いですが、このような生存戦略の観点からみなおすと、従来とはちがった側面がみえてきておもしろいです。植物にも、独自の「主体性」があることがわかります。

植物は光合成をしながら、太陽光線からエネルギーをとって生きています。そして人間をふくむ多くの動物はその植物を食べることによって太陽エネルギーを利用しています。動物は、植物があってこそ生存ができるのです。

したがって動物が植物を食べつくしてしまわない仕組みがそもそもはたらいています。食べたり食べられたりしながら、しかし共生していかなければならないのが生物です。矛盾があるようで、しかしひとつのシステムになっている。簡単には理解できない世界がここにはあります。


▼ 参考文献
『Newton 2017.4号』ニュートンプレス、2017年4月7日発行