人間は、全体的なひとまとまりとして物事を認知しようとします。全体的にみること(大観)の重要性に気がつくべきです。
白鳥敬著『定理と法則 105』(学研プラス)では「ゲシュタルト心理学」についても説明しています(注1)。


ゲシュタルト心理学:人間の心を、部分の集合ではなく全体性を持った構造と捉える心理学的立場。


ゲシュタルトとは、ドイツ語で「形態」という意味です。ゲシュタルト心理学は、全体的な構造として人間の心をとらえる心理学です。

たとえば言葉は、非常にゆっくりはなされると意味がわかりづらいですが、ある程度の速さをもって話されると理解できます。これは、わたしたちが一語づつ言葉を理解しているのではなく、話のひとまとまりをパターンとして把握し認知しているからです。

ひとつの言葉にとらわれてそれについてかんがえつづけたり、ひとつの文字をみつづけているとわけがわかなくなります。これを「ゲシュタルト崩壊」といいます。

あるいは音楽をきくときには、一音づつ音をきいて感動するのではなく、ひとまとまりのメロディーをきいて感動しているはずです。音符の一音一音を断続的にきかされたらわけがわかりません。

このように、ひとまとまりのパターンあるいは全体的なイメージが大事です。全体をまずとらえることです。それから必要があれば細部をほりさげていくという順序がよいでしょう。




『定理と法則 105』では、ゲシュタルト心理学に関連して「プレグナンツの法則」 についても説明しています。


プレグナンツの法則:視覚は、対象を一つのまとまりとして見ようとするが、そのとき最も簡潔なまとまりとして見ようとする。


たとえば天井の模様に人や動物の姿がみつかることがあります。人間は、ランダムな模様のなかに何らかのまとまった形をさがしだそうとします。

あるいはかすれたような不完全な絵であっても、それが何であるか認知できます。人間は、簡潔なひとまとまりで絵(対象)をとらえます。これはコンピューターにはできないことです。

このように、ひとまとまりの全体をみる心のはたらきが誰にでも元来そなわっています。全体をみるということは大観するといいかえてもよいでしょう。大観の重要性に気がつくべきです(注2)。


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全体をまずとらえる - ゲシュタルト心理学 -

▼ 注1:参考文献
白鳥敬著『定理と法則 105』(人に話したくなる教養雑学シリーズ)学研プラス、2013年9月11日

▼ 注2
たとえば速読法は大観の方法として有用です。本をよむときに、なるべく速く最後まで一気によんで、全体像をまずつかんでしまった方が、意味が理解しやすくなり誤読もなくなります。教科書を勉強するときもおなじです。最初から、一語一句や部分にとらわれていると学習効果はあがりません。