大気も大地も複雑系であることに気がつくことが大事です。天気や地震の 100% 正確な予測(予知)はできません。
白鳥敬著『定理と法則 105』(学研プラス)では「バタフライ効果」についても説明しています(注1)。


バタフライ効果:複雑系では、わずかな状態の変化が非線形に拡大していき予測はできない。


「ブラジルでバタフライ(蝶)が羽ばたくと、テキサスでトルネード(竜巻)が引き起こされるか?」と、アメリカの気象学者 ローレンツは問い掛けました。

この問い掛けにこたえるためには、複雑系についてまず理解しなければなりません。

たとえば天気を予測するためには、大気の流れをとらえなければなりません。しかし大気の流れは、無数の空気分子がおたがいに影響しあいながら複雑に変化しているので、すべてのうごきを観測し計算することは不可能です。

このように、多くの要素がからみあい干渉しあってなりたつ体系(システム)を複雑系といいます(注2)。大気は典型的な複雑系です。

たとえば天気予報のための計算をするときに、初期値のわずかなゆらぎによって、まったくちがう結果がでてしまいます。初期値のゆらぎによって間違った予報をだしてしまうことがあります。こうして天気予報はときどきはずれるのです。小さな変化や観測誤差によって予報はことなってくるのであり、複雑系では、100% 正確な予測(予知)はできません。

複雑系では、わずかな状態の変化が非線形に拡大していきます。非線形とは一次式であらわせないということであり(注3)、解が決まらないので 100% 正確な予測はできません。

テレビなどでみる実際の天気予報では、かぎられた変数と過去のデータを元にして確率(たとえば降水確率)を計算して発表しているにすぎません。

このように複雑系では、わずかな変化(ちがい)によって、その後の現象が大きくことなってくることに注目しなければなりません。

わずかな変化とは、たとえば蝶が羽ばたくような非常に小さな程度の擾乱かもしれません。そしてその後におこる現象は、トルネードのような大災害をおこす自然現象かもしれません。

ローレンツは、世界中の誰もが関心をもてるように、シンボリックなキャッチフレーズをだしたのです。




そして地震予知についてです。大地も複雑系です。したがって 100% 正確な予測、つまり予知(つぎにおこる地震の場所・日時・規模を予知すること)はできません。地震学者も確率を計算しているだけです。そしてその確率は当てになりません。




ややむずかしい話になりましたが、自然災害にそなえるためには複雑系とゆらぎについて知っておいた方がよいのでここに記しておきました。


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▼注1: 参考文献
白鳥敬著『定理と法則 105』(人に話したくなる教養雑学シリーズ)学研プラス、2013年9月11日

▼ 注3
「複雑系」のことを「カオス」ということもあります。

▼ 注2:参考サイト「線形と非線形について」
視点・論点 「"1たす1は 2"でない世界」(NHK 視点・論点)
※「"1たす1は2"でない世界」(非線形の世界)とはいいかえれば複雑系のことです。