170228b 抽象化と貫徹

図1 法則は物事を貫徹する
定理や法則を知ることは人間の叡智をまなぶことになります。物事を抽象化することによって定理や法則はつくられます。他方で定理や法則は具体的な物事を貫徹します。
白鳥敬著『定理と法則 105』(学研プラス)は、自然科学・工学・数学・生理学・心理学・社会学・経済学などの代表的な定理と法則 105 個を厳選し解説しています。各項目は50音順にならんでいるので興味のあるページからよみすすむことができます。




定理とは、数学的に真であると照明された命題のことを言います。

ある現象を観察することことによって、そこに規則性を見つけ出し、その規則性が一般性を持つことが証明されることによって、法則が作られていきました。

定理や法則を知っていれば、自然界や社会のことが、一目でぱっと理解できるようになります。定理や法則は、人間の知恵を高めるための道具でもあるのです。


定理や法則は抽象的なものです。物事やデータを抽象化して定理や法則をつくるのですから当然のことです。

いいかえると定理や法則の背後には、膨大なデータ・情報、人間の情報処理のいとなみ、知の歴史があるのです。その法則にいたるまでにどれだけの時間と労力がかかったことか。したがって定理や法則は人間の叡智の「結晶」といってもよいでしょう。

著者の白鳥敬さんは、「定理や法則を知っていれば、自然界や社会のことが、一目でぱっと理解できるようになります」とのべています。とても重要な指摘です。つまり、定理や法則をまなぶことには、いちじるしく学習時間を短縮する効果もあるのです。




定理や法則をまなぶと、物事を適切に抽象化すればするほど、物事の核心にくいこんでいけることがわかります。
 
抽象的なことは具体的な物事には役立たないとおもう人がいるかもしれませんが、それはちがいます。法則(抽象化されたもの)は、具体的な物事を貫徹します(図1)。抽象化すると物事を貫徹する力も生じます。したがって定理や法則がいったん確立すると、今度は、具体的にそれをつかっていくことができるのです。

具体と抽象は一見矛盾するようですが矛盾はせず、表裏一体になってはたらきます。


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▼ 参考文献
白鳥敬著『定理と法則 105』(人に話したくなる教養雑学シリーズ)学研プラス、2013年9月11日