いま生きている生物を観察することによって生物の進化を理解することができます。わたしたち人間についても進化論の観点からかんがえなおさなければなりません。

ナショナルジオグラフィックの DVD『生命の進化』(全6巻)は “地球のいのち” の貴重な記録映像であり、現生生物の観察・研究から動物の進化について考察しています(注1)。


1. 生命体の先祖
わたしたち人間は動物の一種です。動物はどこからきたのでしょうか? どのように誕生し、どのようにして現代の姿になったのでしょうか?

これらの謎が、最新の遺伝子解析技術などによって次々に解明されています。わたしたちの祖先は、今なお現存するおもいもかけない意外な生き物、カイメン(海綿動物)でした。カイメンはもっとも原始的な多細胞動物です。
 

2. 生命体の動きの起源
動物の進化に革命をもたらしたもの、それは生命体に動きがあたえられたことです。科学者たちは、動きをつくる筋肉と神経の起源をさがしました。そして行動の歴史は、イソギンチャククラゲのような刺胞動物からであるとかんがえました。わたしたち人間の動きの起源は刺胞動物にあったのです。


3. カンブリア爆発
5億年以上前のカンブリア紀という地質時代に、多種多様な動物たちが爆発的に誕生しました。「カンブリア爆発」とよばれます。突然、複雑な構造をもつ動物が海にあふれます。現存するほとんどの生き物の出発点がここにありました。あらゆる種が、このときの35種類の原型を基本にしているのです。たとえばゾウは、海中をおよぐ数センチのピカイアの体の設計図をうけついでいます。


4. 陸上への進出
何億年ものあいだ生物は水中にとどまっていました。しかし3億8千万年前頃、節足動物がはじめて陸にあがりました。それは、現在のダンゴムシのような動物ではなかったかとかんがえられています。そのご節足動物は、適応をくりかえしながら地球上に生息地をひろげて繁栄しています。


5. 生き残りをかけた戦い
高度な適応力を進化させた動物たちがいました。重い殻をすてさり、移動するスピードを手にいれたイカ、イカと同様に水を吹き出して移動する手段を持ったオウムガイ、色素細胞とそれをうごかす大きな脳をもち、擬態で相手の目をくらますタコなどです。


6. 究極の生命体
ヒトデウニナマコなどの棘皮動物は、老化がなく、病気やケガがなければ永遠に生きることも可能です。棘皮動物は筋力や脳をもたず、止まってみえるくらい動きもおそいですが、実に、5億年以上も繁栄してきました。
 
このように、想像を絶するおどろくべき生物がいます。

人間は、進化の頂点をきわめた、もっともすぐれた生物であるとおしえられてきましたが、はたして本当でしょうか?


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生物の進化を理解しようとするとき、通常でしたら、化石をみながらその歴史をおいかけるという方法をとりますが、この DVD では、いま生きている生物を観察しながら生物の進化を考察しています。

水族館や動物園や博物館にいったら、上記の生物に注目してみるとよいでしょう。いままでとはちがった観点から生物の進化を理解できるかもしれません。

多様な生物の観察からわかるように、原始的な生物は、その後にあらわれたより高等な生物にすべてほろぼされてしまったというのではなく、いまでも生きつづけています。そうだからこそ多様性が地球に生じているのであり、多様性を増すように生物の世界は進化しています。

わたしたち人間(ホモ・サピエンス)が原始的で単純だととみなしている生物は、進化論的にみて意外にも長期間生存しています。それに対して、わたしたち人間は高等だとうぬぼれていますが意外にも不安定です。人間は複雑になりすぎたのです。

わたしたちは、わたしたち人間自身を進化論の観点からかんがえなおさなければならない時期にきているとおもいます。


▼ 注1
DVD『生命の進化』(全6巻)ナショナル ジオグラフィック、2007年 、発売元:TDKコア株式会社
※ ナショナル ジオグラフィック プレミアム セレクション DVD(全80巻)の一部として発売されましたが、現在は完売になっているようです。