せきは、気道が感知した細菌や異物をアウトプットする仕組みです。せきが長引くときには医者に診てもらった方がよいです。

グラフィックサイエンスマガジン『Newton 2017.3号』の「身近な "?" の科学」では「せき・たん」について解説しています(注1)。



口と鼻から吸った空気を肺に送るまでの通り道である「気道」の表面には、細胞が並んでおり、細胞のすきまには、神経の末端が突きだしている。これらの神経の末端では、(中略)有害物質や細菌などの異物の存在を、物理的・化学的に感知する。これらの刺激を感知すると、神経が興奮して信号を送るようになり、脳の「延髄」という部分に届く。すると延髄から、声帯や胸部、腹部の筋肉を収縮させる命令が送られる。こうしてせきが出るのだ。


すなわちわたしたちの気道は感覚器官としてもはたらいていて、ここから情報がインプットされ、信号が脳におくられ、それを脳が処理して命令をおくりだします。そして声帯や胸部・腹部の筋肉をつかって異物をアウトプットするという仕組みがはたらいているわけです。

せきをおさえる風邪薬などがありますが、これは、このような〈インプット→プロセシング→アウトプット〉を止め、細菌や異物を排出する機能がはたらかないようにするものです。したがってせきがとまったからといってせきがなおったわけではありませんので注意してください。むしろ細菌や異物が体内にとどまってしまうので、せきが長引くときは医者に診てもらった方がよいです。




本項では説明していませんが、似たような現象として下痢があり、下痢止めをのむと下痢がとまりますが、下痢がなおったわけではありません。むしろわるい物質が体内にとどまってしまうので、ひどい下痢のときには医者に診てもらった方がよいです。

わたしはこのことを、衛生状態のわるい開発途上国をおとずれた人に何回も説明しましたが、まったく理解できないで下痢止めをすぐにのむご年配の方がいました。

アウトプットは一般的に止めない方がよいでしょう。


▼ 注1
『Newton 2017.3号』ニュートンプレス、2017年3月7日発行