アルツハイマー病は記憶障害からはじまります。誰にでも発症する可能性があります。発症をおくらせるために、わかいときから趣味にとりくむのがよいでしょう。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton 2017.3号』では、「アルツハイマー病 研究最前線」を特集しています(注1)。
世界で現在、アルツハイマー病をわずらう人の数は3000万人に達し、2050年には8000万に達すると推計されています。

「有害なゴミ」の蓄積は、アルツハイマー病を発症する10〜20年前からすでにはじまっており、アルツハイマー病を発症するころには、それ以上蓄積しない程度までたまっていることがわかってきているそうです。アルツハイマー病は高齢者の病気だとあなどるわけにはいきません。
アルツハイマー病によってニューロンの死滅が最初におきるのが「嗅内皮質」と「海馬」です。
目や鼻や皮膚といった感覚器官でうけた情報は電気信号に変換されて、大脳皮質の内側の「大脳辺縁系」にある嗅内皮質というところにあつめられ、その後、となりの海馬におくられます。海馬は、これらの信号を整理・統合し、大脳皮質にある「視覚野」や「嗅覚野」といった、それぞれの感覚の情報を処理する場所へおくり、記憶として格納します。
そして何かをおもいだそうとする際は、この逆の経路をたどることで記憶がよみがえります。
したがってアルツハイマー病を発症すると、ものわすれや、あたらしいことがおぼえられないといった記憶障害がまずあらわれるのです。
アルツハイマー病がさらに進行すると大脳皮質にまで病変がひろがります。
大脳皮質は「側頭葉」や「頭頂葉」などにわけられ、側頭葉では、昔の記憶を保管していたり、聴覚からの情報を処理しているため、アルツハイマー病によって昔の記憶がうしなわれ、言葉をうまくはなせなくなります。頭頂葉が障害をうけると空間認識能力がなくなり、後頭葉に障害がひろがると判断ができなくなります。
ニューロン(神経細胞)は、ほかのニューロンから信号をうけとる「樹状突起」と、うけとった信号をつぎのニューロンへ伝達する「軸索」をもっており、ニューロンとニューロンは「シナプス」という構造で、信号のうけわたしをしています。
記憶は、ニューロンどうしの「ネットワーク」によってつくられているとかんがえられています。
あらたに記憶をするとシナプスの形が変化することが知られ、おなじシナプスにくりかえし信号がおくられるとそのシナプスは大きくなり、効率的に信号をうけとれるようになります。こうして必要なシナプスは大きくなり記憶が強化される一方で、つかわれないシナプスは消えてしまい、つまり記憶がうしなわれていくことになります。ニューロンの死は「記憶の死」といえるでしょう。
残念ながら、アルツハイマー病を完治させる薬はまだありません。
しかし認知機能のおとろえをおさえる薬はすでに販売されています。治験薬の開発もすすんでいます。また「アミロイドPET」とよばれる早期発見の診断法の開発などもすすんでいます。
アルツハイマー病について理解することは、同時に、わたしたち人間が日々おこなっている情報処理の仕組みを理解することにもなります。
アルツハイマー病を発症してしまうと情報処理がうまくできなくなるのです。アルツハイマー病の発症はその人の情報処理が終焉しつつあることしめしています。今回の『Newton』のイラストと記事をみてこのことがよくわかりました。
アルツハイマー病の発症は老化とともに誰にでもおこりえます。発症をおくらせる努力を現段階ではするしかありません。発症をおくらせる方法のなかでは、「趣味を楽しむ」ということを基軸にするのが一番いいのではないでしょうか。そのためにはわかいときから趣味をもつ必要があるでしょう。老後になってやることがないというのが一番いけません。テレビを毎日みているだけだとアルツハイマー病が発症してしまいます。
▼ 注1
『Newton 2017.3号』ニュートンプレス、2017年3月7日発行
世界で現在、アルツハイマー病をわずらう人の数は3000万人に達し、2050年には8000万に達すると推計されています。

アルツハイマー病とは簡単にいうと、脳内に「アミロイドβ」や「タウ」とよばれる “有害なゴミ” がたまり、学習や記憶に携わるニューロン(神経細胞)が死に至ることで、記憶を失ったり、思考能力が低下したりする病気です。(中略)
アルツハイマー病と同時に「認知症」という単語もよく聞くことがあると思います。認知症とは、「脳のニューロンが死んでしまったり、はたらきが悪くなったりするために、記憶力だけでなく、思考能力は行動能力までもが失われ、日常の生活や活動をさまたげる程度になるまでの状態」を指します。そしてこの認知症をひきおこす原因で最も多いのが、「アルツハイマー病」なのです。(中略)
アルツハイマー病の発症を遅らせるにはどうすればいいのでしょう。
- まずは日々の運動
- 規則正しい食事
- バランスのとれた食事
- 趣味を楽しむ
- 料理を楽しむ
- 楽器の演奏を行う
- 睡眠を十分にとる
- 配偶者と会話する
- 配偶者と買い物に行く
- 普段から意識的に脳をはたらかせる
「有害なゴミ」の蓄積は、アルツハイマー病を発症する10〜20年前からすでにはじまっており、アルツハイマー病を発症するころには、それ以上蓄積しない程度までたまっていることがわかってきているそうです。アルツハイマー病は高齢者の病気だとあなどるわけにはいきません。
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アルツハイマー病によってニューロンの死滅が最初におきるのが「嗅内皮質」と「海馬」です。
目や鼻や皮膚といった感覚器官でうけた情報は電気信号に変換されて、大脳皮質の内側の「大脳辺縁系」にある嗅内皮質というところにあつめられ、その後、となりの海馬におくられます。海馬は、これらの信号を整理・統合し、大脳皮質にある「視覚野」や「嗅覚野」といった、それぞれの感覚の情報を処理する場所へおくり、記憶として格納します。
そして何かをおもいだそうとする際は、この逆の経路をたどることで記憶がよみがえります。
したがってアルツハイマー病を発症すると、ものわすれや、あたらしいことがおぼえられないといった記憶障害がまずあらわれるのです。
アルツハイマー病がさらに進行すると大脳皮質にまで病変がひろがります。
大脳皮質は「側頭葉」や「頭頂葉」などにわけられ、側頭葉では、昔の記憶を保管していたり、聴覚からの情報を処理しているため、アルツハイマー病によって昔の記憶がうしなわれ、言葉をうまくはなせなくなります。頭頂葉が障害をうけると空間認識能力がなくなり、後頭葉に障害がひろがると判断ができなくなります。
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ニューロン(神経細胞)は、ほかのニューロンから信号をうけとる「樹状突起」と、うけとった信号をつぎのニューロンへ伝達する「軸索」をもっており、ニューロンとニューロンは「シナプス」という構造で、信号のうけわたしをしています。
記憶は、ニューロンどうしの「ネットワーク」によってつくられているとかんがえられています。
あらたに記憶をするとシナプスの形が変化することが知られ、おなじシナプスにくりかえし信号がおくられるとそのシナプスは大きくなり、効率的に信号をうけとれるようになります。こうして必要なシナプスは大きくなり記憶が強化される一方で、つかわれないシナプスは消えてしまい、つまり記憶がうしなわれていくことになります。ニューロンの死は「記憶の死」といえるでしょう。
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残念ながら、アルツハイマー病を完治させる薬はまだありません。
しかし認知機能のおとろえをおさえる薬はすでに販売されています。治験薬の開発もすすんでいます。また「アミロイドPET」とよばれる早期発見の診断法の開発などもすすんでいます。
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アルツハイマー病について理解することは、同時に、わたしたち人間が日々おこなっている情報処理の仕組みを理解することにもなります。
アルツハイマー病を発症してしまうと情報処理がうまくできなくなるのです。アルツハイマー病の発症はその人の情報処理が終焉しつつあることしめしています。今回の『Newton』のイラストと記事をみてこのことがよくわかりました。
アルツハイマー病の発症は老化とともに誰にでもおこりえます。発症をおくらせる努力を現段階ではするしかありません。発症をおくらせる方法のなかでは、「趣味を楽しむ」ということを基軸にするのが一番いいのではないでしょうか。そのためにはわかいときから趣味をもつ必要があるでしょう。老後になってやることがないというのが一番いけません。テレビを毎日みているだけだとアルツハイマー病が発症してしまいます。
▼ 注1
『Newton 2017.3号』ニュートンプレス、2017年3月7日発行