日本語の作文の基本原則は「修飾の順序」と「読点」の原則です。日本語をふだん書くなかで注意すれば習得できます。
本多勝一著『日本語の作文技術』(朝日文庫)では、日本語の作文の原則についてくわしく解説しています。その基本原則は「修飾の順序」と「読点」です(注1)。



修飾の順序
  • 長い修飾語ほど先に

読点
  • 長い修飾語が二つ以上あるときその境界にうつ(長い修飾語)
  • 語順が原則の逆になったときにうつ(逆順)



これらの基本原則にしたがって下記の例文をなおしてみたいとおもいます(注2)。


例文4)
誰でも好きでやっていることは一生懸命になるし、それに関して勉強したり工夫したりするので、自然に上達するものである。芸事は、無理して嫌だと思いながらやっても、成長はないということ。(故事ことわざ辞典/無料サイト)


「修飾の順序」の原則にしたがってまずなおすとつぎのようになります。

  • 好きでやっていることは一生懸命になるし、それに関して勉強したり工夫したりするので誰でも自然に上達するものである。嫌だと思いながら無理してやっても芸事は成長はないということ。 

「誰でも」と「芸事は」を強調したいのであれば前にもってきて、「読点(逆順)」の原則によりつぎのようになります。


  • 誰でも、好きでやっていることは一生懸命になるし、それに関して勉強したり工夫したりするので自然に上達するものである。芸事は、嫌だと思いながら無理してやっても成長はないということ。

簡単にいえば、読点のうちかたが引用例文ではできていないということになりますが、そもそも何を強調したいのかをあらかじめはっきりさせなければなりません。強調したい語句は一般的に前にもってくるので、「読点(逆順)」の原則がはたらくことが多いです。




例文5)
熊本県を中心とする地震は21日に発生から1週間を迎える。(日本経済新聞電子版、2016/4/20)


「地震は21日に発生」と読めてしまいます。実際には14日に発生しました。

  • 熊本県を中心とする地震は発生から1週間を21日に迎える。 

「21日」を強調したいのであれば、

  • 21日に、熊本県を中心とする地震は発生から1週間を迎える。 




例文6)
鈴木の下した決断が微妙だった2人の関係にひびを入れた。(日本経済新聞電子版、2016/4/21 )


「決断が微妙だった」と読めてしまいます。「修飾」の原則にしたがって、

  • 微妙だった2人の関係に鈴木の下した決断がひびを入れた。

「鈴木の下した決断」を強調したいのであれば、

  • 鈴木の下した決断が、微妙だった2人の関係にひびを入れた。




例文7)
アップル社は改造されたアイフォーンが故障しても、修理を受け付けていない。(Yomiuri online, 2016/09/30)


  • 改造されたアイフォーンが故障してもアップル社は修理を受け付けていない。
  • アップル社は、改造されたアイフォーンが故障しても修理を受け付けていない。




例文8)
取材を進める中で、官邸には去年の12月ごろに宮内庁から内々に天皇陛下のご意向が伝えられていたことが分かりました。(NHK WEB 特集、2016.10.18)


わかりやすい文章に修正すると、

  • 去年の12月ごろに天皇陛下のご意向が宮内庁から官邸には内々に伝えられていたことが取材を進める中で分かりました。 

NHK 記者が取材をすすめたことを強調したいのであれば「取材を進める中で」を前にもってきますが、その必要はあるのでしょうか?




例文9)
F40ではないほかのフェラーリ1台が奥に置かれたF40をふさぐ形で置かれていたが、ほかのフェラーリは鍵が壊されて脇に動かされ、奥にあったF40だけがなくなっていた。(朝日新聞デジタル、2016年10月27日)


「読点(長い修飾語)」の原則にしたがって、

  • F40ではないほかのフェラーリ1台が、奥に置かれたF40をふさぐ形で置かれていたが、ほかのフェラーリは鍵が壊されて脇に動かされ、奥にあったF40だけがなくなっていた。

「奥に置かれたF40をふさぐ形で」を強調したければ、

  • 奥に置かれたF40をふさぐ形で、F40ではないほかのフェラーリ1台が置かれていたが、ほかのフェラーリは鍵が壊されて脇に動かされ、奥にあったF40だけがなくなっていた。




例文10)
せいぜい泥棒と石だけで戦わざるを得なかった時代には、征服できる地域の面積はおのずと限られていた。(科学、2017.2号、岩波書店)


  • せいぜい石だけで泥棒と戦わざるを得なかった時代には、征服できる地域の面積はおのずと限られていた。




上記の基本原則はかなり初歩的なものであり、日本語をふだん書くなかでこころがけていれば習得できます。いいかえると、上記の原則ができていないということは、かなり初歩的なことができていないということになります。書かれた日本語をみればすぐにわかります。

この程度のことはさっさと習得してしまって、日本語の作文技術のもっとすすんだ段階(中級・上級)に はやくすすんでいった方がよいでしょう。


▼ 注1
「修飾の順序」の原則には、「親和度(なじみ)の強弱による配置転換」もあります。「読点」の原則には、「思想のテン」(思想の最小単位をしめすときにテンをうつ)もあります。

▼ 注2
本ブログ記事は、日本語の作文技術を普及するためにアップしたのであり、引用例文(報道)の内容がどうのこうのという話ではありません。報道はむしろすぐれたものばかりです。校正をしている時間が記者たちにはいそがしくてなかったのだろうとおもわれます。

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▼ 参考文献
本多勝一著『【新版】日本語の作文技術』(朝日文庫)朝日新聞出版、2015年12月7日
本多勝一著『実戦・日本語の作文技術』(朝日文庫)朝日新聞出版、1994年9月