170122 鳥瞰
図1 3段階モデル

鳥瞰図をつかって視覚的にまずとらえ、つぎに言語をつかって分析し、そして要約を書きだして総合するという3段階によって日本史の理解がいちじるしくすすみます。

歴史群像編集部編『超ワイド&パノラマ 鳥瞰イラストでよみがえる歴史の舞台』(学研プラス)をみれば歴史のハイライトが一目でわかります。どうしてこの場所だったのか。地形から理由が見えてきます。



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歴史上重要な合戦や都市など40を鳥瞰図とともに詳細解説しています。たとえばつぎのようなことが一目瞭然です。


  • 古代の太宰府は、663年の白村江の戦いでやぶれた日本の朝廷が、唐・新羅軍の侵攻にそなえた軍事要塞でした。
  • 古代最大の内乱「壬申の乱」は、琵琶湖南端、瀬田の唐橋で決戦をむかえました。「唐橋を制する者は天下を制す」といわれます。
  • 平安京は、四神相応風水にもとづいて建設がすすめられました。
  • 史上初の武家政権は、丘陵と海にかこまれた天然の要害の地にきずかれました。
  • 本能寺の変後、明智光秀にとっては想定外な出来事がつづきました。そして「天王山」をむかえます。
  • 松尾山城から関ヶ原を見下ろしていた小早川秀秋には、東西合戦の動向のすべてが手にとるようにわかりました。秀秋は、絶妙のタイミングがくるまで攻撃をまっていたという説もあります。
  • 入り江の入り口(戸)だったためそこは「江戸」とよばれていました。江戸城は当初は、入り江につきでた台地の突端にきずかれた小さな城にすぎませんでした。
  • 1868年の上野戦争で、彰義隊がこもる寛永寺は、吉祥閣についで中堂、本堂も焼失しました。新政府軍は彰義隊を壊滅させました。


本書は、鳥瞰図もすぐれていますが、それらの解説もよくできています。鳥瞰図をみて視覚的にとらえたら、つぎに解説を読んで、言語的に詳細を確認し理解することができます。鳥瞰することは大観、言語をつかって詳細を理解することは分析といってもよいです。

鳥瞰、分析とくればあとは総合です(図1)。総合とは、分析によってえられて情報を統合してアウトプットすることです。要点を書きだしたり、要約文をつくったり、あるいは感想や考察を書きだします。言語をつかってアウトプットすることには情報を統合するはたらきがそもそもあります。

この〈鳥瞰→分析→総合〉という3段階の方法はあらゆる分野でつかえます。

しかし学校教育などでは言語的な教育・記憶が極端に重視されていて、鳥瞰(大観)や総合(アウトプット)の訓練がうまくできていません。

そこで本書が役立ちます。本書をつかって練習(勉強)すればよいのです。これは日本史の試験勉強や受験勉強にもつかえます。

ほかの分野でも、このような本をさがしだして練習すればよいです。あるいは鳥瞰図集をまず買ってきて、個々の分析(言語的な理解)は教科書(テキスト)や百科事典をつかってもいいわけです。 

そしてノートに要約を書きだしてみます。

いまからでもおそくありません。鳥瞰(大観)からはじめるべきです。


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▼ 文献
歴史群像編集部編『超ワイド&パノラマ 鳥瞰イラストでよみがえる歴史の舞台』(Gakken Mook)学研プラス、2017年1月12日