精子や卵子のような細胞が生まれる際の「減数分裂」は遺伝子の多様なくみあせをもたらします。生命の多様性が生じる仕組みについて知ることは大事なことです。

グラフィックサイエンスマガジン『Newton』(2017.2号)のシリーズ「細胞分裂のふしぎ 第2回」では「精子や卵子をつくる『特別な分裂』」と題して、細胞分裂の際におこなわれる遺伝情報の分配のしくみについて解説しています。




細胞分裂では、細胞自体が二つに分裂するとともに、遺伝情報(DNA)を二つの細胞へ過不足なく分配することが欠かせません。一方で、精子や卵子のような細胞が生まれる際の特別な細胞分裂である「減数分裂」では、DNA が通常とはちがった方式で分配されます。

IMG_7069 (1)



減数分裂とよばれる特別な細胞分裂は遺伝情報(DNA)を次世代へうけつぐために必要です。

遺伝情報(DNA)の分配は、分裂前の細胞から分裂後の細胞への "引っ越し" にたとえることができます。DNA は荷物であり、DNA がつめこまれた(凝集した)"段ボール箱" にあたるものが「染色体」です。DNA は、この "段ボール箱" にわけられることによって分配されます。

通常の細胞分裂では、分裂後の細胞に分配される染色分体の本数は分裂前とおなじです。

これに対して減数分裂では2度の細胞分裂がおき、最終的に、分裂後の細胞に分配される染色分体の本数は分裂前の半数に減ります。これが「減数」の意味するところです。

減数分裂による染色分体のくみあわせは細胞によってことなります。すなわち減数分裂では、遺伝子の多様なくみあわせが生じることになります。




このような過程をへて生命に多様性が生じることになります。

多様性は、種の進化にとって有利だとかんがえられます。たとえば非常に大きな環境変動がおこったとき、多様性がないと種全体が滅亡しますが、多様性があれば、環境変動に適応できて生きのこる個体がでてくることになります。

近年、生物多様性の重要性がさけばれています。多様性については、地球環境の保全や人類共存・世界平和のための思想として理解するだけでなく、生命の原理・仕組みとして理解することも重要でしょう。

『Newton』のシリーズ「細胞分裂のふしぎ」はこのような認識をふかめるためにとても役立ちます。


▼ 引用文献
『Newton 2017年 2 月号』ニュートンプレス、 2016年12月26日

▼ 関連記事
生命の根幹となる現象を知る - シリーズ:細胞分裂のふしぎ(1)「細胞はいかにして二つに分裂するのか」(Newton 2017.1号)-