初期の地球において、単純な分子が複雑になっていき、やがて最初の生命が生まれました。生命は、情報分子(DNA)、酵素(タンパク質)、膜をもちます。 

地球上には現在、170万種をこえるが生物が生息しています。これらは、たった一種の「共通の祖先」から分かれてきたとかんがえられています。

Newton別冊『生命誕生の謎』では、生命(生物)はどのようにしてはじまったのか? 物質が生命へと変貌する奇跡について解説しています。




そもそも生命とはどのようなものでしょうか。


物理学者シュレーディンガーは「生物はこれまでの物理学ではあつかえないしくみをもっている」とし、その例を二つ上げた。それは、遺伝子の情報にもとづいて子孫を残すこと(自己複製・進化)と、栄養をとって活動すること(代謝)である。


つまり生命の基本条件はつぎの2つです。

  • 自己複製
  • 代謝


ケンブリッジ大学のクリックとワトソンは、細胞の核のなかにある DNA が「二重らせん構造をもつ長い分子」であることがをあきらかにしました。

DNA(デオキシリボ核酸)とは、あらゆる生物がもっている「生物の設計図」です。無数の原子がつながった長大な分子で、すべての生物がこの DNA の情報をもとに増殖しています。

一方、シカゴ大学のミラーは、初期の地球で有機物ができることを実験でしめしました。

またアメリカのショスタクは、もっとも単純な最初の生命はつぎの3つの要素からなるとかんがえました。
 

  • 生物の "設計図" である「情報分子」
  • 化学反応をすすめる "装置" としてはたらく「酵素」
  • これらを囲う "しきり" である「膜」


現在の生命では、情報分子は DNA、酵素はタンパク質、しきりは脂質の分子でできた膜にあたります。

科学者は、単純な分子が複雑になっていき、やがて最初の生命になったとかんがえています。それではどのようにして最初の生命が生まれたのか、つぎの仮説が提唱されています。


1. RNAワールド仮説
最初にまず RNA が誕生した。RNAとは、DNA とタンパク質のはざまにある物質であり、「設計図」にもなり「装置(酵素)」としてもはたらく。

2. タンパク質ワールド仮説
まずタンパク質ができ、そのご RNA がつくられ、最初の生命になった。

3. RNA とタンパク質は独自に誕生し、のちに合流し、生命になった。

4. 海のなかで膜ができて、生命に進化した。


要するに、どのようにして最初の生命が生まれたのかについては諸説があり、いまだによくわかっていません。現代科学最大の難題といってよいでしょう。




最初期の地球はただの物質世界でした。そこに生命が誕生したことによって生命(生物)と非生物とに世界は分化しました。非生物とは、海水や大気や岩石などの物質であり、生命からみるとそれらは環境ということになります。したがって最初の生命が生まれたときに同時に環境も生じたのであり、ただの物質世界は、生命と環境からなる世界に分化したのです(図1)。

161223 生命
図1 生命と環境とに分化した
(生命は「膜」でおおわれ、環境から区別されている)


そのご生命は、環境に適応するためにさまざまなに変化(進化)してきたことは進化論がおしえるとおりです。

人間も生命の一種であり、現代人であっても本質的には、上記の生命の原理にしたがって生きている(生かされている)ことにはかわりません。したがって生命の原理について知ることはとても重要なことです。




生命の起源に関心をもつことは、生命や地球、進化論などをトータルにとらえるために役立ちます。生命の起源にかぎらず、物語の起源を知ることは、その物事の経緯・状況を全体的にとらえるために大変役立ちます。原点をおさえておくということです。
 

▼ 文献
『Newton 生命誕生の謎』(Kindle版)ニュートンプレス 、2015年11月25日

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