科学者・技術者が実験をくりかえして大量のデータをあつめるように、わたしたちは、アクションリサーチによってさまざまな情報を能動的に収集することができます。

科学者・技術者は実験をよくおこないます。

実験をおこなうときには、その前に仮説をたてて、それを検証していくというのが普通です。 実験の結果、予想したとおりになった場合は仮説が検証されたということになります。

このときある人は、「実験が成功した」というかもしれません。

しかし一方で、予想外の結果になった、うまくいかなかったときには「実験は失敗した」というかもしれません。そして実験に失敗したとしても、「最初から成功はしないよ」「10回やって1回成功すればいいんだよ」と負け惜しみをいうかもしれません。

失敗はしたくない。成功したいとおもう人は多いです。




ところが実験には、それとは別の側面もあることに気がつかなければなりません。

優秀な科学者・技術者は、実験を多数回くりかえすことによってデータを大量にあつめているのです。成功か失敗かにかかわらず、データをあつめる、情報を収集するというのはもっとも重要な実験の側面です。

現代では、インターネットとデバイス(コンピューター)があるので、画面をみていればいろんな情報がどんどんはいってきます。

しかしそうではなくて、能動的にその課題にかかわって、こちらから積極的に行動したり体をうごかしたりしたりすることによって、はじめてやってくる情報もあるわけです。

ここには、成功か失敗かという単純な物差しでははかれない多様な世界があります。むしろ、予想外のことがおこったときこそ、あたらしい情報がえられるチャンスです。実験は、あたらしい世界への入口になります。

科学者・技術者は実験といいますが、このような、実施のなかから能動的に情報をあつめる方法は、もっと一般的に「アクションリサーチ」とよんでもよいでしょう。


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