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再現されたラスコー洞窟(平行法で立体視ができます)

約2万年前の洞窟壁画がみられます。イメージをえがくことは、人間(ホモ・サピエンス)の基本的・本源的な能力として重要です。

東京・上野の国立科学博物館で特別展「世界遺産 ラスコー展 -クロマニョン人が残した洞窟壁画-」が開催されています(注1)。約2万年前にえがかれた洞窟壁画の最高傑作を間近で体感するという企画です。

写真はいずれも平行法で立体視ができます。会場内の一部では撮影が許可されていました。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 - >>



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洞窟壁画を間近で体感する
ラスコーの洞窟と壁画が、最新テクノロジーをつかって1mm 以下の精度で復元されています。迫力満点の太古の傑作が実物大でよみがえります。



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大きな黒い牝ウシ
大きな黒い牝ウシが、小さなウマの列の中央でかさねがきされています。輪郭線がまずきざまれ、体が黒くぬられ、ふたたび輪郭がひかれ、最後に、角の先端と鼻先などが黒色で加筆されています。



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ウマの列
ウマの列がえがかれています。輪郭線がまずひかれ、赤や黄色で体が着色され、するどい線によって輪郭線がふたたびひかれています。でこぼこした洞窟の壁面をうまく利用してえがいています。2D写真ではわかりません。立体視に是非トライしてみてください。



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井戸の場面
わかりにくいですが、右にバイソンが、その左にヒトが、その左にサイがいます。バイソンは腸がはみだし、ヒトにむかって角をつきだしています。ヒトはたおれて硬直し、失神しているかのようにみえます。サイは、左にむかってその場をたちさろうとしています。切迫したストーリーを暗示しているかのようです。



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泳ぐシカ
わかりにくいですが、左向きのシカ5頭の頭部がえがかれています。群れで川をおよいでわたる様子にみえます。



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背中合わせのバイソン
反対向きになった2頭の黒いバイソンがえがかれています。全長は約 2.4m あります。足や尻など部分的に色をぬりのこすことで遠近感が生じています。バイソンは春先に冬毛がぬけおちるので、左のバイソンの赤い部分はあらたに春に生えた毛をしめしています。




大変おもしろくめずらしい特別展です。まずは、約2万年前の壁画をじっくり味わってみるのがよいでしょう。

クロマニョン人は、わたしたち人間とおなじホモ・サピエンスに属するとかんがえられています。つまりわたしたちの祖先です。

ホモ・サピエンス(人間)は、文字を発明するよりもはるかに前から絵(イメージ)をえがいていたわけです。ホモ・サピエンスのなかでクロマニョン人だけがイメージをえがく能力を特別にもっていたとはかんがえられないので、ホモ・サピエンスは誰でもイメージをえがく能力を本源的にもっているとおもわれます。

イメージをえがくことは、情報処理や能力開発をすすめるためにとても重要です。イメージをつかうことは初歩的・基本的な方法です。たとえばプロセシングではイメージをつかい、アウトプットでは言語(文字)をつかうという方法(順序)が、人類進化論的にみても自然なやり方であるといえるでしょう。


▼ 注1
特別展「世界遺産 ラスコー展 -クロマニョン人が残した洞窟壁画-」
国立科学博物館のサイト

▼ 参考文献
海部陽介監修『世界遺産 ラスコー展』(図録)、毎日新聞社・TBSテレビ発行、2016年

▼ 記事リンク
イメージをえがく - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(1)-
洞窟の構造をとらえる - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(2)-
クロマニョン人の情報処理能力をみる - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(3)-
手・指をつかってアウトプットする - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(4)- 
手をつかいこなして道具をつくる - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(5)-
イメージをえがき、手をつかってアウトプットする - 特別展「世界遺産 ラスコー展」(まとめ)-