これからの自然公園(国立公園)は、地球温暖化などによる気候変動の影響に対応していかなければなりません。あたらしい指針が必要です。

『ナショナル ジオグラフィック』(2016年12月号)では、「気候変動 自然公園の選択」と題して、地球温暖化などによる気候変動の影響で、自然公園(国立公園)が、本来の姿を維持できなくなっていることがしめされています。


1980年代になると、研究者たちは、米国各地の国立公園で新たな変化が起きていることを徐々に認め始めた。沿岸部の公園は海面上昇で陸地の面積が縮小する一方で、セコイア国立公園では山火事の規模が拡大している。今世紀初めには、グレイシャー国立公園内で最大の氷河が2030年までに消滅する可能性があると発表された。 


たとえばヨセミテ国立公園でも、地球温暖化の影響で、数種の小型哺乳類の生息域が、90年前の記録よりも標高の高い場所にうつっています。どこにでも以前はいたシマリスとモリネズミは公園内ではもはやほとんど見つかりません。温暖化により、動物たちが暑さをさけて移動していることはあきらかです。

このように、そこに本来いた生物がいなくなることもありますが、一方で、本来いなかった外来種がやってきて生態系を根本から変えてしまうこともおこっています。

このようなことは米国だけでなく世界各地でおこっています。日本でもおこっています。自然公園(国立公園)は、本来の自然を維持していくことはもはや不可能になってきました。わたしたちは変化を受け入れざるをえません。従来のような「保護思想」だけではやっていけなくなってきたのです。自然公園をおとずれる人々も、「損なわれていない」悠久の自然を体験することがむずかしくなってきました。




今日、地球温暖化などの気候変動による自然の変化を前提にした自然公園(国立公園)のあり方をかんがえなければならない時代にはいったといえるでしょう。あたらしい指針が必要です。

これからは、自然公園の継続的な変化に対応しつつ、幅のある複数の未来を想定し、それらにそなえていかなければなりません。

訪問者にも、本来の昔の生態系を見せることが困難になってきた以上、変化する生態系を体験してもらい、あらたな自然観を提供するプログラムを考案しなければなりません。

自然公園も、歴史的な転換点にさしかかりました。


▼ 引用文献
『ナショナル ジオグラフィック 日本版 2016年12月号』日経ナショナル ジオグラフィック社、2016年11月30日