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井真成墓誌 (「日本」が明記された最古の墓誌)(交差法で立体視ができます)

漢字がつくりだされたことによって、メッセージの伝達が時空をこえて可能になりました。

東京富士美術館で、特別展「漢字三千年 - 漢字の歴史と美 -」が開催されています(注1)。歴史的な数々の作品をとおして、文化さらに文明の発達に漢字がはたしてきた役割を詳細にたどることができます。


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井真成墓誌(拡大写真、「日本」の漢字がみえます)(交差法で立体視ができます) 
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井真成(699-734年)は、遣唐使の一員として中国にわたりましたがわかくして中国でなくなりました。

この墓誌は、現在発見されている日本の遣唐使関係の唯一の墓誌であり、「日本」という国号が記された資料としては現在みられる最古のもので、非常に貴重な資料です。日中の交流を研究するうえでも重要であり、今回の特別展の目玉のひとつです。

2004年10月10日、中国・西安市にある西北大学歴史博物館がこの「井真成墓誌」の発見を公表しました。西安東郊の建築現場より出土しました。

墓誌には、つぎのように記されています(大意)。


姓は井、字(あざな)は真成。国は日本と号す。生まれつき優秀で、国命で遠い国までやってきて一生懸命努力していた。彼の学問を修め、官僚として朝廷に仕え、活躍するさまはまことに抜きんでていた。ところが思わぬことに急に病気になり、開元22年に在職のまま宿舎で亡くなった。享年は36歳。玄宗皇帝は彼の逝去をはなはだ残念に思われ、官職を与え、葬儀も役所で執り行うよう命じた。彼の身体はこの国に埋葬されたが、魂はきっと故郷に帰ったに違いない。


これ以外に資料がないため井真成は誰なのかわかりませんが、「1300年の時を経て今再びの魂の帰国。井真成。」として関係者に大きな衝撃をひきおこしました。

墓誌にきざまれた漢字は、実に1300年の時をへ中国から日本にメッセージをつたえたわけであり、時空をこえた情報伝達がここにはあります。

時空をこえてメッセージをのこしたりつたえたりできることは現代ではあたりまえのことですが、歴史的にみると、漢字をつくりだしたことがこのようなことを可能にしたのであり、文化さらに文明の発達のためにどれだけ大きな役割を漢字がはたしてきたかがよくわかります。


▼ 注1
特別展「漢字三千年 - 漢字の歴史と美 -」
会場:東京富士美術館
会期:2016年10月20日~12月4日
※ 会場内は撮影が許可されていました。
※ 京都、新潟、宮城、群馬に巡回します。

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