161030 消化
図1 栄養は吸収され、のこりは便として排出される
 
大腸では、腸内細菌によって最後の消化がすすみ、便がつくられ、肛門から便は排出されます。

グラフィックサイエンスマガジン『Newton』12月号では、シリーズ「消化の旅」の第4回(最終回)として「栄養を吸収する腸のしくみ」について解説しています。




午前7時ごろに適量の朝食を食べたとしたら、油たっぷりのものでないかぎり、9〜11時ごろには小腸の最初の領域である「十二指腸」に到達して、強力な消化酵素を含む膵液などとまざりはじめています。十二指腸の長さは、小腸全体の5%もありません。小腸の大半を占める空腸と回腸を通過する間に、食べたものは膵液などとよくまぜられます。(中略)

朝食には、頭をはたらかせるため、脳のエネルギー源のブドウ糖(グルコース)を摂れるご飯やパンを含めるとよいといわれます。(中略)

食べたでんぷんは、唾液と膵液に含まれる消化酵素(アミラーゼ)によって、グルコース分子二つがつながった「マルトース」に分化されて、小腸にたどりつきます。また、でんぷんの分子構造には、実はアミラーゼでは分解しきれない部分があり、分解途中の「デキストリン(限界デキストリン)」という構造も小腸にたどりつきます。マルトースやデキストリンなどを最終的にグルコースにまで分解する場所が、小腸細胞の表側に無数にある、消化酵素などを埋めこんだ微細な突起「微絨毛」です。

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そして大腸では、腸内細菌によって、水に溶けるタイプの食物繊維が分解されたり、消化・吸収しきれなかった分子の一部が別の形に変換されたしします。消化酵素にたよらない "消化" がおきているのです(注1)。

腸内細菌としてはつぎのようなものが知られています。

  • ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム属など)
  • 乳酸菌(ラクトバチルス属など)
  • バクテロイデス属菌
  • 大腸菌
  • クロストリジウム属菌

大腸の内容物は、はこばれるにつれて徐々に水分をうしない、最後には肛門から便として排出されます。便の固体成分のうち、おおよそ3割が腸内細菌だといわれています。

こうして、口からはいってきた食べ物は、消化というプロセシングをへて便になり、肛門からアウトプットされることになります(図1、注2)。


▼ 文献
『Newton』2016年12月号、ニュートンプレス、2016年12月7日

▼ 注1
小腸にも細菌がいますが、その量は大腸の0.1%たらずです。

▼ 注2
食べ物は環境からインプットされます。便は環境へアウトプットされます。わたしたち人間は、基本的にプロセシングをする存在であり、インプットとアウトプットによって環境とかかわっているということがわかります。人間が生きる基本的な仕組みは〈インプット→プロセシング→アウトプット〉であり、人間と環境は一体になって存在するのですから、人間と環境はつねにセットにしてとらえていく必要があります。