メッセージを相手につたえるときには、事実のうえに思いをのせてアウトプット(出力)するとよいです。

ミュージカル『李香蘭』(注1)をみました。昭和の戦争とはどのようなものであったのか、李香蘭の半生を通してかたりかけてきます。


日本人でありながら流暢な中国をはなす淑子は類いまれなる美貌と歌の才能をみとめられ、中国の歌姫「李香蘭」になって人気を博す。祖国「日本」と、生まれそだった母国「中国」との狭間で、したしく両国がむすばれることを願っていたが、日本軍の宣伝にその人気を利用された彼女は、戦後 中国で、祖国反逆罪で裁判にかけられてしまう。


ミュージカルにしては、歴史上の出来事を時系列に正確にしめしていてやや理屈っぽいと最初はおもいましたが、歴史的な事実と李香蘭らの思いとがくみわさって「おなじ過ちをくりかえしてはいけない」というメッセージが力強くつたわってきました。

何らかのメッセージを相手につたえるときには事実のうえに思いをのせてアウトプット(出力)していくのがよいようです。一般的に思いは抽象的なものですが事実をふまえることにより足が地についたようになりわかりやすい明確なメッセージになります。

メッセージをうけとる側も、歴史的事件を時系列においかけるだけでなく、その時代に生きた人々が何を思っていたのかを想像するようにします。

あるいは情報収集のときには、現場の事実を観察しながら一方で関係者からの聞き取りもおこなうようにするとよいでしょう。




企画者の浅利慶太さんは「 戦争の悲劇を若い人たちが知らないことに危機感を覚えます」といいます(注2)。日本が敗戦へとむかったおろかな道程をみなおし、つぎの世代につたえようとする思いが『李香蘭』からつたわってきました。歴史とは、事実とともに思いをつたえることが重要であるのでしょう。途方もない悲劇を二度とくりかえさないために見えておきたい作品です。


▼ 注1:『李香蘭』
企画・構成・演出:浅利慶太(浅利慶太プロデュース公演)
作曲:三木たかし
会場:自由劇場
主催:浅利慶太演出事務所

▼ 注2
公演プログラム