海は、地球上にのこされた最後の "フロンティア" といってよいでしょう。海に関する知識は、地球環境の保全にとりくむときに、あるいは水族館で海洋生物をみるときなどにも役立ちます。

グラフィックサイエンスマガジン『Newton 2016.10号』で「シリーズ:海のすべて」の連載がはじまりました。海がはたしている役割や海流の謎・海底資源・海の起源などについて全4回にわたって紹介するという企画です。

その第1回は「知られざる海の素顔」として、海の基本情報やその意外な側面について解説しています。

海は、地球を地球たらしめるもっとも重要な要素です。海について理解することは地球を理解することにつながります。グローバル化をむかえた現代においてますます海は重要になってきています。



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「海は大きくて深い」というイメージをもっている人が多いですが、実際には、地球全体からみれば海の水の量は非常にすくなく、地球の表面をおおう「薄皮」のような存在といえるでしょう。地球の半径は約6400キロメートルもあるのに海の平均水深は3.7キロメートルしかなく、これは、地球の半径に対して1000分の1以下(約0.058%)にすぎません。

しかしこのような「薄皮」が地球の環境に対しては決定的に重要な役割をはたしています。

海は、大気にくらべて1000倍あたたまりにくいため、海の温度は大気にくらべて安定しています。そのおかげで、地球全体の気候がおだやかになり、生命にとって都合のよい環境が維持されているのです。また地球温暖化の主要な原因物質である二酸化炭素の吸収先としても海は重要です。海水中には、安定して存在できない元素をのぞき、ほぼすべての元素がふくまれています。

海の生物の大部分は海の表層付近に集中して生息しています。これは太陽光が、海のなかに入っていくとふかくなるにつれてどんどんよわくなってしまうために、植物プランクトンが海の表層付近にしか存在できないためです。海洋全体の生物量は、陸上全体の生物量のと比較するとおよそ1000分の1だと見積もりられています。

そして海の底は、平らなところばかりでなく「海嶺」とよばれる長大な海底山脈や、「海溝」とよばれるふかい溝、点々とつらなる海山の列などがあります。ただし、地球全体の海底地形についてはその10%ほどしか探査ができていません。海底探査はまだまだこれからです。陸地が探査しつくされた今日、海底は、地球上にのこされた最後の "フロンティア" といってもよいでしょう。