160906 消化
図1 消化はプロセシングである
 
食べ物を食べることはインプット、食べ物を消化することはプロセシングです。

グラフィックサイエンスマガジン『Newton 2016.10号』ではシリーズ「消化の旅 第2回:胃酸の泉へ」として、口からはいってきた食べ物が胃のなかでどのように消化されるのかを解説しています。食べ物を口にいれるのは「インプット」、食べ物を胃で消化するのは「プロセシング」ととらえるとわかりやすいでしょう。 胃のなかで肉や魚は分解されるのに、なぜ胃は分解されないのでしょうか?




  1. 食べ物が胃にはいると胃酸とまぜあわされます。
  2. 胃酸によって、食塊のタンパク質はときほぐされます。
  3. 消化酵素「ペプシン」 が、ときほぐされたタンパク質をはさみこむようにしてみじかく切断していきます。


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胃の表面は粘液の層でおおわれていて、また胃の表面の細胞同士は隙間なくむすびついており、これらのお陰で胃は酸からまもられています。くわえて消化酵素の液滴と胃の粘液とは水と油のようにまじりあいません。消化酵素の液滴は、胃腺の底のほうから胃腺の壁にふれずにうかびあがってくるので、胃の細胞は消化されずにすむというわけです。

胃は、食べ物がある程度たまってひろがると、食べ物と胃液とをまぜる「蠕動運動」(ぜんどううんどう)もはじめます。胃にくびれが生じては、そのくびれが、胃の中身をしぼりだすように胃の出口のほうへ移動していきます。

こうして食べた物がしだいに消化されていきます。

とはいえ胃酸がですぎたり、粘液の分泌がすくなかったりすると、胃の細胞も消化され胃の病気になります。そこで胃酸の分泌をおさえる薬が開発されています。

胃酸分泌細胞が、細胞表面にあるミット(受容体)で「ヒスタミン」という分子をキャッチすると胃酸が分泌することが知られています。市販されている「H2 ブロッカー」という薬はこのミットのはたらきをブロックすることで胃酸の分泌をおさえます。

またピロリ菌という細菌は、強酸がわきでる胃腺のちかくでも生息できます。胃にある尿素を原料にしてアルカリ性のアンモニアをつくる酵素をもっており、そのはたらきで胃液を中和し、まわりに "バリア" をはって生きのこるのです。すごい細菌がいるものです。ピロリ菌は、胃・十二指腸潰瘍や慢性胃炎をひきおこすので要注意です。約4000万人の日本人にピロリ菌がいるといわれています。

最近は、内視鏡をつかって胃のなかを検査できるようになっています。患部の一部をつまみとったり、内視鏡だけで手術をすることも可能です。胃炎・胃潰瘍などと胃がんとは症状だけでは区別がつきにくく、治療法もことなります。内視鏡検査ですみやかに診断し治療法をきめることが必要だそうです。


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