古代ギリシャの都市国家では、民主政を基盤として、技術・学術・芸術にくわえて医学も発展させていました。

東京国立博物館・平成館で、特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」が開催されています(注1)。

第5展示室「クラシック時代」では、古代ギリシャの医学関連の展示もあります。

いくつかの医者の墓で出土した医療器具も展示されており、鉗子・メス・ヘラ・薬サジ・フックなどが出土しています。これらは、外科手術などの科学的医療行為が古代ギリシャにおいてすでにおこなわれていたことを物語っています。

医師の墓碑のなかでもっともふるいものは前6世紀のものであり、ギリシャの都市国家では、医師が高い地位をみとめられていたことがわかります。人々は、公衆衛生における医師の重要性を理解していました。個人の健康の問題や、時折おこる疫病の大流行への対処ほか、戦傷者の治療のためにも医師は必要でした。出産中や産後の女性の死亡率、乳幼児の死亡率をさげるためにも貢献しました。

前430年から前350年に記されたヒポクラテス全集(医学書)は、今日にいたるまで、科学的医学の発展をうながす触媒となり、医療倫理の強固な基盤となりました。ヒポクラテスは『空気、水、場所について』という論考で環境理論としての元素について論じ、前5世紀にして医学・地理学・人間学のあいだに密接な関係があることを証明しました。また人類の発展には文化的な接触がとくに重要だと指摘しました。

このように古代ギリシャの都市国家では、民主政を基盤として、技術・学術・芸術にくわえて医学も発展させました。

 
▼ 注1
特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」 
会場:東京国立博物館・平成館
会期:2016年9月19日まで