
図1 都市国家のモデル
古代ギリシャでは、都市を中心にして都市国家が各地で組織されました。〈都市-田園地帯-自然環境〉という構造と、物と情報の流れ(インプットやアウトプット)に注目すると都市国家の当時の様子がイメージしやすいです。
東京国立博物館・平成館で、特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」が開催されています(注1)。
本展で中心となる展示室は、第4展示室「幾何学様式〜アルカイック時代」(前900年頃〜前480年頃)と第5展示室「クラシック時代」(前480年〜前323年)です。古代ギリシャ文化がこの時代に大きく花ひらいたことは会場に行って見れば一目瞭然です。展示されている数々の作品はどれも質の高いものばかりです。おいそぎの方は第4・第5展示室から見ていくのもよいでしょう。
この時代の特徴は、古代ギリシャ各地でたくさんの都市国家(ポリス)が出現し発展したことです。都市国家の出現は、古代ギリシャの歴史上もっとも重大な出来事でした。最初の都市国家は、前9世紀後半あるいは前8世紀初頭に誕生したとかんがえられています。
都市国家とは都市を中心にして組織された国家であり、ローマ帝国のような領域国家が出現する以前の古代の国家です。都市国家の中心には都市があり、その周辺には田園地帯が分布し、その外側には自然環境がひろがっていました(図1)。都市の中核にはアクロポリス(丘の上の城塞)がありました。
都市国家の時代になって、アルファベット式のギリシャ文字がつくられました。また貨幣が流通しはじめ貨幣経済が機能しはじめました。外国人との交流もはじまりました。さまざまな政治現象が生じ,多くの思想家たちが政治理論を生みだしました。政治や政治学を意味する politics という言葉は polis(都市国家)に由来します。
社会・経済が発展すると、これらを基盤として芸術や学問もいちじるしく活性化しました。こうして古代ギリシャ文明を代表するいくつもの特徴が都市国家で形成されました。
都市でくらす市民(ポリタイ)は、政治的権利・軍事的義務・土地所有権をもち、それ以外の住民とははっきりと区別されていました。古代ギリシャ人たちは、倫理観・宗教・言語・芸術などの伝統をとおして共通の性質を認識し身につけていきました。
都市国家では、物や情報を外部から積極的にとりいれ(インプット)、一方で、周辺のほかの都市国家へ物を販売したり情報を発信したりもしました(アウトプット)。都市国家の基本的な構造が確立するとともにその機能(働き)も活発になりました(図1)。こうしてさまざまな都市国家の間でおおきな交流がまきおこりました。
▼ 注1
特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」
会場:東京国立博物館・平成館
会期:2016年9月19日まで
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都市国家では、物や情報を外部から積極的にとりいれ(インプット)、一方で、周辺のほかの都市国家へ物を販売したり情報を発信したりもしました(アウトプット)。都市国家の基本的な構造が確立するとともにその機能(働き)も活発になりました(図1)。こうしてさまざまな都市国家の間でおおきな交流がまきおこりました。
▼ 注1
特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」
会場:東京国立博物館・平成館
会期:2016年9月19日まで
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