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東京国立博物館 平成館
 
特別展「古代ギリシャ」では、各展示物の空間配置とともに各展示室が工夫されていて、それぞれの時代の特色と時代の流れを体験的につかむことができます。

東京国立博物館・平成館で、特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」が開催されています(注1)。会場に行ってみるとのべ8つの展示室があり、それぞれの部屋を順番にまわっていくことによって古代ギリシャを旅することができる仕組みになっています(図1)。


160816 ギリシャ
図1 会場のフロアマップ


第1会場
 第1室 古代ギリシャ世界のはじまり(前6800年頃〜前2000年頃)
 第2室 ミノス文明(前3200年頃〜前1100年頃)
 第3室 ミュケナイ文明(前1600年頃〜前1100年頃)
 第4室 幾何学様式〜アルカイック時代(前900年頃〜前480年頃)

第2会場
 第5室 クラシック時代(前480年〜前323年)
 第6室 古代オリンピック
 第7室 マケドニア王国
 第8室 ヘレニズムとローマ


古代ギリシャの旅は新石器時代からはじまります。

紀元前3200年ちかくになると初期青銅器時代にはいります。エーゲ海の南にうかぶクレタ島では開放的な海洋文化が花開きます。

その後、ギリシャ本土を中心にして次第に力を増したミュケナイ(ミケーネ)が、紀元前1450年頃にクレタ島を征服します。ハインリヒ=シュリーマンはミュケナイを1876年に発掘し、数々の黄金製品を発見しました。

紀元前8世紀になるとギリシャ各地で都市国家(ポリス)が生まれます。都市文明が発展して学問や芸術が大きく花ひらいていきます。第4展示室では、アテネやスパルタなどを旅し、「アルカイック・スマイル」にも出会えます。

またオリンピアのゼウス神域では4年に一度の競技祭がおこなわれるようになります。古代オリンピックのはじまりです。

紀元前508年にアテネは民主政を確立します。

紀元前7世紀頃になるとギリシャの北方にマケドニア王国が成立します。

そしてギリシャの時代がおわり、ヘレニズム時代そしてローマ帝国の時代になりますが、ギリシャ美術はほろびることなく生きつづけ、その後の西洋文明に大きな影響をあたえました。


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本展では、このように古代ギリシャの歴史の旅をすることができます。

それぞれの展示室(展示室の空間)がそれぞれの時代(ひとつの時代)をあらわしています。時代という抽象的な概念が展示室という具体的な空間で認識できるのが博物館あるいは特別展のいいところです。

このような認識の方法は、書籍や言語だけをつかって理解する方式とは基本的にちがい、展示室をあるいて体験的に学習した方がはるかに効率的にしかもたのしく時代や歴史についてまなぶことができ、記憶にもよくのこります。特別展に行ったときの体験は一生の思い出として努力をしなくても自然にのこります。

各展示室(の空間)が各時代をあらわしているとすると、展示室内に展示されている作品や出土物はそれぞれの時代の証拠、時代の「証言者」であるといってよいでしょう。 展示品は、後世のわたしたちにメッセージを具体的につたえようとしています。

このように、各展示室とさまざまな展示品(要素)をとおして、各時代の総体的特色と具体的な証拠の両者をとらえることが大切でしょう。

  • 展示室:時代(全体)
  • 展示品:証拠(要素)

会場に行って見ると、さまざまな展示品の空間配置とともに、展示室のつくり・構造が実によくできていて、それぞれの時代の特色がうかびあがるように工夫されているのがよくわかります。展示品だけでなく展示室のつくりにも是非注目してみてください。


▼ 注1
特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」 
会場:東京国立博物館・平成館
会期:2016年9月19日まで